COLUMN
営業フレームワーク一覧|BANT・MEDDIC・SPIN・ソーシャルスタイルなど30個を「どこで使うか」で整理
- まず自社の営業が、6つの場面のどこで詰まっているかを決める。フレームワークはそのあとに選ぶ
- ヒアリングの型は、商談の回数と決める人の数で選ぶ。1回で決まるなら BANT、複数回かかり決裁者が別にいるなら MEDDIC 系
- フレームワークがくれるのは「聞く項目」まで。何が取れたら次に進むかの線は、自社で引く
営業の本やセミナーでは、毎年のように新しいフレームワークの名前が出てきます。BANT、MEDDIC、SPIN、The Model。どれも有名で、どれも正しそうに見えます。ところが「うちはどれを使えばいいのか」と聞かれると、答えられる人は多くありません。
迷う理由は、フレームワークを一列に並べて比べているからです。BANT と The Model は、そもそも答えている問いが違います。BANT は「この商談を進めてよいか」、The Model は「営業組織をどう分業するか」に答えます。違う場面の道具を比べても、優劣はつきません。
この記事は、営業のやり方を見直したい従業員10〜300名の会社の経営者・営業責任者に向けて、代表的な30個の営業フレームワークを「営業のどの場面で使うか」で並べ直し、一般的な使われ方と、向く会社・向かない会社を整理したものです。営業研修で教えられている型も含めています。
- 営業フレームワークは、6つの場面のどれかの問いに答える道具。誰に売るか・どう分業するか・何を聞くか・相手の人をどう読むか・どう提案するか・どう見込むか。場面が違うものを比べても、優劣はつかない(1章)
- 代表的な30個の、一般的な使われ方と向く会社。相手の性格の見立てや、営業研修で教えられている型も含めて、1つずつ「何を決めるための道具か」で書く(2章)
- 選び方は「どこで詰まっているか」と、「商談の回数」「決める人の数」で決まる。6つの問いに答えると、自社の組み合わせが出る診断つき(3章)
01営業フレームワークは6つの場面に分かれる
営業フレームワークとは、営業の仕事のどこかを、決まった項目や順番で考えるための型のことです。数は多いのですが、どれも営業の仕事の「ある場面の、ある問い」に答えるために作られています。営業の仕事を上流から順に6つの場面に分けると、たいていのフレームワークはどれか1つに収まります。
答える問いどの市場の、どの会社・どの人を狙うか
代表的な型3C/STP/ICP・ペルソナ/TAM・SAM・SOM
答える問い見込み客が受注・継続に至るまで、誰がどこを担うか
代表的な型The Model/営業ファネル/SDR・BDR
答える問いこの商談は進めてよいか。何が足りないか
代表的な型BANT/BANTCH/MEDDIC/CHAMP/GPCTBA/C&I
答える問い目の前の人にどう接すると話が進むか。その人個人は何を得たいか
代表的な型ソーシャルスタイル/DiSC/組織ニーズと個人ニーズ
答える問い相手にどう気づかせ、どう選んでもらうか
代表的な型SPIN/ソリューション営業/チャレンジャー・セールス/インサイトセールス/FABE
答える問い今期いくら決まりそうか。どこを直すか
代表的な型ヨミ管理/パイプライン管理/KPIツリー/解約率・NRR
混同しやすいのは③と⑤です。③は「この商談を見極めるために、何が取れていればよいか」という項目の型、⑤は「相手との会話をどう進めるか」という進め方の型です。BANT で項目を決め、SPIN で聞き方を決める、のように組み合わせて使うのが一般的です。
④は③と⑤の手前で「この人にはどう話すか」を決める場面です。会社として必要な項目がそろっていても、目の前の担当者個人に動く理由がなければ、商談は社内で止まります。
もう1つ、営業研修で教えられている型(SPIN・サンドラー・ストラテジック・セリングなど)は、1つの場面に収まりません。面談の進め方や大型案件の攻め方を、練習の方法とセットで教えるパッケージだからです。2章の最後に、別に並べます。
02代表的な30個を、場面ごとに
1つずつ、「何を決める道具か」「中身」「一般的な使われ方」「向く会社・向かない会社」の順で書きます。考案者や年は、説が分かれるものは「〜とされる」と書いています。
① 誰に売るか
3C:自社が勝てる場所を決める型です。Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つから見ます。経営コンサルタントの大前研一が提唱したとされます。事業計画や新商品の立ち上げで、営業より前の段階に使われることが多く、営業の現場では「競合と比べて何を言うか」を整理するときに戻ってきます。日々の商談の判断に使うには、粒度が粗い型です。
STP:狙う市場と、そこでの立ち位置を決める型です。Segmentation(市場を切る)、Targeting(狙う層を選ぶ)、Positioning(どう見られたいかを決める)の順に考えます。フィリップ・コトラーが体系化して広めたとされます。営業リストの条件や、提案のメッセージを決めるときの土台になります。商品が複数ある会社や、顧客層が広い会社に向きます。
ICP(理想の顧客像)とペルソナ:ICP は「どの会社を狙うか」(業種・規模・課題)、ペルソナは「その会社の誰に会うか」(役職・悩み・決め方)を決めます。どちらも営業・マーケティングの現場で一般に使われる言葉です。法人営業では ICP を先に決め、営業リストの絞り込みや広告の配信条件に使います。ペルソナは提案書やトークの言葉選びに使います。こちらから声をかける営業(アウトバウンド)をしている会社に向き、紹介中心で来た相手に合わせるしかない会社では効きにくくなります。
TAM・SAM・SOM:市場の大きさと、現実に取りに行ける範囲を決めます。TAM は全体の市場、SAM は自社の商品が届く市場、SOM は実際に取れる見込みの市場です。資金調達や事業計画で使われることが多く、営業では「リストが何社あれば目標に足りるか」の逆算に使います。受注が年に数件の会社では、判断に効きにくい型です。
② どう分業するか
The Model:マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの分業と、部門のつなぎ目の数字を決める型です。福田康隆『THE MODEL』(翔泳社、2019年)で紹介され、SaaS を中心に日本で広まりました。著者がセールスフォース・ドットコムで実践した分業がもとになっています。各部門が次の部門に渡す件数と率を KPI にして、どこで詰まっているかを見ます。見込み客の数が多く、商談が定型化できる会社に向きます。数人の営業で、1人が最初から最後まで持つほうが速い会社では、引き継ぎで情報が落ちます。部門ごとの数字だけを追うと「渡した件数」は増えても質が落ちるので、何をもって次に渡すかを先に決めます。
営業ファネル:見込み客が受注に至るまでの段階と、段階ごとの歩留まりを決めます。段階は「認知 → 興味 → 商談 → 提案 → 受注」のように切りますが、切り方は会社によります。The Model の土台になる考え方で、「受注を2倍にするには、商談数と受注率のどちらを上げるか」を考えるときに使います。ほぼすべての法人営業で使えます。
SDR・BDR:インサイドセールスの中の分業です。一般的には、SDR が問い合わせなど反響への対応、BDR が狙った会社への新規開拓を担います。ただし呼び分けは会社によって異なり、逆の意味や同じ意味で使う会社もあります。インサイドセールスの人数が増えたときに、反響対応と開拓を分けるために使います。混ぜると反響対応が優先され、開拓が止まりやすくなります。
③ 何を聞くか
BANT:この商談を進めてよいかを見極める型です。Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の4つを確かめます。IBM が営業の現場で使い始めたとされます(1950年代とする説が多く、1960年代とする説もあります)。最も広く知られた見極めの型で、インサイドセールスが商談をフィールドセールスに渡す基準に使われることが多い型です。単価が中程度で、1〜2回の商談で決まる商材に向きます。予算がまだない段階から一緒に作る提案型の商材では、最初に予算を聞くと商談が止まります。
BANTCH:BANT に、Competitor(競合)と Human resources(導入・運用を担う相手側の体制)を足した型です。主に日本のインサイドセールスの解説で紹介される拡張で、特定の考案者はいません。日本の法人営業で、BANT だけでは足りない「どこと比べているか」「誰が動くか」を補うために使われます。
MEDDIC・MEDDPICC:複数の人が関わる大型商談を、取りこぼしなく進めているかを見る型です。Metrics(導入効果の数字)、Economic Buyer(予算を持つ決裁者)、Decision Criteria(選定基準)、Decision Process(決め方の流れ)、Identify Pain(痛み)、Champion(社内で推してくれる人)の6つを確かめます。MEDDPICC は、Paper Process(契約手続き)と Competition(競合)が加わった拡張形です。1990年代半ば、米 PTC 社の営業チームで生まれたとされ、考案者としてジャック・ナポリとディック・ダンケルの名が挙がります。見込みを確かめる会議で「Champion は誰か」「Economic Buyer に会えているか」を聞く使い方が一般的です。決裁者が担当者と別にいて、商談が3回以上かかる商材に向き、1回で決まる商材では項目が多すぎます。
CHAMP:Challenges(課題)、Authority(決裁権)、Money(予算)、Prioritization(優先度)の4つです。BANT の順番を入れ替え、課題から聞く形にしたものです(最後の P を Priority と書く資料もあります)。予算を最初に聞かないので、課題を一緒に掘っていく商談と相性がよい型です。
GPCTBA/C&I:Goals(目標)、Plans(計画)、Challenges(課題)、Timeline(時期)、Budget(予算)、Authority(決裁権)に、Negative Consequences & Positive Implications(やらなかったときの損失と、やったときの利益)を加えた型です。米 HubSpot 社が社内で開発し、公式ブログで紹介しました。問い合わせ起点の営業で、相手の目標から聞き始める型として使われます。相手がまだ課題を言葉にできていない商談に向きます。
④ 相手の人をどう読むか
③が「会社としてこの商談を進めてよいか」を見るのに対し、ここは「目の前のこの人に、どう接し、何を響かせるか」を見ます。性格の型(接し方を決める)と、個人の動機(何を響かせるかを決める)の2種類があります。
ソーシャルスタイル:相手のタイプに合わせて、話し方と進め方を変える型です。「感情を表に出すか、出さないか」と「自分の意見を主張するか、相手の話を聞くか」の2つの軸で、人を4つのタイプに分けます。米国の産業心理学者デビッド・メリルらが1960年代後半に提唱したとされ、現在は米 TRACOM 社が SOCIAL STYLE として研修を提供しています。営業研修やマネジメント研修で、相手のタイプを見立てて接し方を変える練習に使われます。
数字と根拠で話す。持ち帰って検討するので、判断の材料を資料で渡す
結論から、要点だけ短く。雑談を長くしない
決断を急がせない。不安や疑問を聞き出し、相手のペースに合わせる
新しい話題や構想を見せ、勢いを落とさずに進める
DiSC:ソーシャルスタイルと同じく、タイプに合わせた接し方を考える型です。Dominance(主導)、influence(感化)、Steadiness(安定)、Conscientiousness(慎重)の4タイプに分けます。心理学者ウィリアム・M・マーストンが1928年の著書で示した理論をもとに、のちに自己診断の道具として作られました。現在は米 Wiley 社の Everything DiSC が代表的です。診断の質問票がそろっているので、社内で自分と相手のタイプの違いを話す共通言語にしやすい型です。
組織ニーズと個人ニーズ:相手が会社として何を得たいか(組織ニーズ)と、その人個人として何を得たいか(個人ニーズ)を分けて押さえる考え方です。組織ニーズは、売上やコスト、業務の効率、会社のイメージなど、会社が抱える問題から生まれます。個人ニーズは、社内で成果を認められたい、失敗して責任を負いたくない、自分の判断で決めたい、日々の仕事を楽にしたい、といったその人自身の動機です。特定の考案者がいる型ではなく、法人営業で広く使われる考え方です。
組織ニーズだけで提案すると、「会社としては正しいが、この人は動かない」が起きます。たとえば同じコスト削減の提案でも、成果を認められたい人には自分の実績になる形で、失敗を避けたい人には失敗しない根拠と段階的な導入で見せます。担当者が社内で推してくれる人(MEDDIC の Champion)になるかどうかが勝負の商談で効きます。担当者と決裁者で個人ニーズが違うことも多いので、人ごとに書き分けます。ソーシャルスタイルが「どう話すか」を決めるのに対し、個人ニーズは「何を響かせるか」を決めます。両方を合わせると、相手の動かし方まで決まります。
⑤ どう提案するか
SPIN:相手に課題の大きさを自分で気づいてもらうための、質問の順番の型です。Situation(状況)→ Problem(問題)→ Implication(その問題を放っておくとどうなるか)→ Need-payoff(解決するとどうなるか)の順に聞きます。ニール・ラッカムが英ハスウェイト社で行った35,000件超の商談の調査にもとづく型で、1988年の著書『SPIN Selling』で広まりました(日本語版は『大型商談を成約に導く「SPIN」営業術』海と月社)。特に Implication の質問が、相手の「今やる理由」をつくります。相手が課題を軽く見ている商談に向き、相手がすでに買うものを決めている商談では回りくどく感じられます。
ソリューション営業(課題解決型営業):商品を売るのではなく、相手の課題に対する解決策として提案する考え方です。特定の考案者がいる手法ではなく、1970〜80年代の米国企業の営業から広まった一般的な営業スタイルとされます。商品説明型の営業から一歩進むときの考え方として、日本でも長く使われています。相手が課題を自覚していることが前提で、自覚がない相手には、次のチャレンジャー・セールスやインサイトセールスが使われます。
チャレンジャー・セールス:相手がまだ気づいていない見方を示し、議論の主導権を取る型です。Teach(教える)、Tailor(相手に合わせる)、Take Control(主導権を取る)の3つで進めます。CEB(現在はガートナーの一部)のマシュー・ディクソンとブレント・アダムソンが、2011年の著書『The Challenger Sale』で示しました。営業担当者のタイプを分類した調査から、成果を出す営業は「関係を作る人」より「相手の考えに挑む人」だった、という主張で広まりました。業界の知見を持つ営業に向きます。経験の浅い営業がやると、ただの押しつけになります。
インサイトセールス:相手の業界や会社について、相手より先に「気づき」を持って会う営業スタイルの総称です。特定の考案者がいる言葉ではなく、書籍では米 RAIN Group のマイク・シュルツとジョン・ドーアによる『Insight Selling』(2014年)などがあります。日本では、事前調査と仮説を持って初回商談に臨む営業の呼び名として使われることが多い言葉です。
FABE:Feature(特徴)→ Advantage(優位性)→ Benefit(相手にとっての利益)→ Evidence(証拠)の順で、商品説明を組み立てる型です。英語圏で広く使われる FAB に、証拠を足した形で、特定の考案者はいません。特徴から話し始めて、相手の利益と証拠で締めます。商品の違いを短い時間で伝える必要がある商談に向きます。
⑥ どう見込むか
ヨミ管理(確度管理):今期いくら決まりそうかを決める型です。商談ごとに A(ほぼ確定)〜D(可能性あり)などの確度をつけ、金額と掛け合わせて見込みを出します。日本の営業会議で最もよく使われている型です。ランクの定義が担当者の感覚になりやすいので、「何が取れたら A か」を③の項目で決めておくと、見込みを確かめる会議が「どう思う?」の場になりません。
パイプライン管理:段階ごとに、何件・いくらの商談がたまっているかを見る型です。SFA・CRM(営業支援・顧客管理のシステム)上で、段階ごとの件数と金額、段階に留まっている日数を見ます。止まっている商談を早く見つけるのが目的です。
KPIツリー:売上の目標を、行動の数と率に分解する型です。「売上 = 商談数 × 受注率 × 単価」「商談数 = 接触数 × 商談化率」のように分けます。目標を決めるときと、どこを直すかを決めるときに使います。「行動量を増やせ」で終わらず、どの率が低いかを見るための型です。
解約率・NRR:売ったあとの継続と拡大を見る指標です。NRR(売上継続率)は、期初の既存顧客からの売上が、アップセルを足し、縮小と解約を引いて、1年後にどれだけ残ったかを示します。100%を超えれば、既存顧客だけで売上が伸びている状態です。月額課金の商材で、新規の営業と同じくらい重く見られます。The Model の最後の部門(カスタマーサクセス)の数字にあたります。
営業研修で学ぶ型
営業研修の会社が、考え方と練習の方法をセットにして提供しているものです。1つの場面に収まらず、面談の進め方や大型案件の攻め方をまとめて教えます。海外で生まれ、日本でも翻訳・紹介されてきたものが多く、中身で分けると3つの系統になります。
研修SPIN/サンドラー
主にまたがる場面③ 何を聞くか / ⑤ どう提案するか
研修ストラテジック・セリング/ターゲット・アカウント・セリング
主にまたがる場面③ 何を聞くか / ④ 相手の人をどう読むか / ⑥ どう見込むか
研修コンセプチュアル・セリング/ソリューション・セリング/チャレンジャー/バリューセリング/コマンド・オブ・ザ・メッセージ
主にまたがる場面⑤ どう提案するか
SPIN の研修:中身は⑤の SPIN と同じです。研修では、4種類の質問を自分の商材で作り、ロールプレイで使い分ける練習をします。ラッカムが1974年に設立した英ハスウェイト社(Huthwaite International)が提供しており、部下の商談を SPIN の観点で指導する、マネージャー向けのコーチングもあります。
サンドラー(サンドラー・セリング・システム):買い手に主導権を渡さず、見込みのない商談に時間を使わないための進め方です。面談の最初に「今日何を決めるか、合わなければ断ってよい」を互いに約束し(アップフロント・コントラクト)、相手の痛みを質問で深く掘り、予算と決め方を確かめてから提案に進みます。提案より先に、見込みの有無を見極めることを重く見ます。米国のデビッド・サンドラーが1960年代に体系化し、1967年に創設したとされる研修で、継続的なトレーニングで身につける形をとります。「とりあえず提案」「見積もりだけ取られて終わる」が多い営業に向きます。
ストラテジック・セリング:大型案件で、買い手側の関係者それぞれを押さえているかを見る型です。買い手側の関係者を、予算を持ち最終決定する人(エコノミック・バイヤー)、実際に使う人(ユーザー・バイヤー)、技術や仕様で評価する人(テクニカル・バイヤー)、社内の情報をくれる協力者(コーチ)に分けるとされます。案件ごとに、誰を押さえていて誰が抜けているかを1枚で見ます。ロバート・ミラーとスティーブン・ハイマンが1980年代に提唱した研修で、海外の大型法人営業で広く使われてきました。提供元の Miller Heiman Group は、2019年に Korn Ferry が買収しています。
ターゲット・アカウント・セリング(TAS):数多くの商談に手を広げず、勝てる少数の案件・顧客に力を集める型です。顧客の調査、関係者の地図(誰が誰に影響するか)、勝ち筋の評価をもとに、案件ごとの計画を立てます。1980年代に米国で生まれた手法とされ、IT 業界の大型法人営業で広まりました。
コンセプチュアル・セリング:商品ではなく、相手が頭に描いている「こうなりたい」という像(コンセプト)に合わせて提案する型です。面談の前に相手が何を実現したいかの仮説を立て、質問でその像を確かめ、こちらの提案がその像にどう合うかを示します。ミラーとハイマンが1987年の書籍『Conceptual Selling』で提唱しました。ストラテジック・セリングで「誰に会うか」を、コンセプチュアル・セリングで「その人と何を話すか」を扱う、対になる研修です。
ソリューション・セリング:⑤のソリューション営業の考え方を、研修として体系にしたものです。相手の痛みを見つけ、解決したあとの姿を一緒に描いてから提案します。米国のマイク・ボスワースが1980年代に体系化したとされ、書籍『Solution Selling』は1994年刊とされます。
チャレンジャー・セールスの研修:中身は⑤のチャレンジャー・セールスと同じです。研修では、相手の業界の常識をくつがえす「気づき」の作り方と、その伝え方を練習します。CEB(現在はガートナーの一部)の研究にもとづくメソッドで、研修としても提供されています。
バリューセリング:相手にとっての価値(得られるもの)が、払う価格を上回っていると相手が納得しているかを見る型です。商談ごとに、相手の課題、解決したあとの姿、決め方、価値を1枚で整理し、どこが足りないかを見ます。米 ValueSelling Associates 社の研修で、整理のためのツール(ValuePrompter)を持ちます。値引きに頼らない営業をしたい会社で使われます。
コマンド・オブ・ザ・メッセージ:自社の価値を、誰が話しても同じ言葉で、相手の課題と結びつけて言えるようにする型です。自社の商品が解決する課題、解決したあとの姿、他社との違い、その証拠を、営業全員が使う「メッセージの型」として先にそろえます。米 Force Management 社の研修で、同社は MEDDICC の研修も提供しており、両方を導入する企業があります。営業の人数が増え、人によって自社の説明がばらついている会社に向きます。
03自社に合うものの選び方
まず「どの場面で詰まっているか」を決める
フレームワークを選ぶ前に、自社の営業がどこで詰まっているかを決めます。詰まり方と見る場面の対応は、次のとおりです。
| 詰まり方の例 | 見る場面 |
|---|---|
| 商談は取れるが、相手が合っていない | ① 誰に売るか |
| 商談の数が足りない/引き継ぎで情報が落ちる | ② どう分業するか |
| 進めるべきでない商談に時間を使っている/失注の理由が分からない | ③ 何を聞くか |
| 項目は取れているのに、担当者が社内で動いてくれない/人によって商談の進み方が極端に違う | ④ 相手の人をどう読むか |
| 商談はするが、相手が「今やる理由」を持たない | ⑤ どう提案するか |
| 見込みが当たらない/月末まで読めない | ⑥ どう見込むか |
ヒアリングの型は「商談の回数」と「決める人の数」で選ぶ
③の見極めの型は数が多く、いちばん迷いやすい場面です。「商談は何回かかるか」「決めるのは担当者本人か、別に決裁者がいるか」の2つの問いに順に答えると、型が1つに絞れます。下の図は、見極めの型を例にした分岐です。ほかの場面も、同じように問いを2つ立てると絞れます。
- 問い 1商談は何回で決まるか
- 1回で決まる問い 2決めるのは誰か
- 担当者本人が決めるBANT予算・決裁権・必要性・時期の4つで短く見極める
- 決裁者が別にいるBANTCHBANT に、競合と相手側で動く体制を足して聞く
- 複数回かかる問い 2決めるのは誰か
- 担当者本人が決めるCHAMP・GPCTBA/C&I課題や目標から聞き、提案を一緒に作る
- 決裁者が別にいるMEDDIC・MEDDPICC決裁者、決め方の流れ、社内で推してくれる人を押さえる。④の個人ニーズも合わせて見る
組み合わせの一般的な形
実際には、場面ごとに1つずつ選んで組み合わせます。よく見られる組み合わせは次のとおりです。
- 少人数の法人営業:ICP + BANT + SPIN + ヨミ管理
- 分業している SaaS 型:The Model + BANT(インサイドセールスからフィールドセールスへの受け渡し)+ MEDDIC(大型案件)+ パイプライン管理 + NRR
- 提案型・コンサルティング型:ペルソナ + CHAMP + 個人ニーズ + インサイトセールス + ヨミ管理(A〜D を③の項目で定義)
- 重点顧客を持つ大型の法人営業:ストラテジック・セリング(案件ごとの関係者の整理)+ MEDDIC + ソーシャルスタイル(接し方)+ パイプライン管理
診断:自社の組み合わせを出す
6つの問いに答えると、場面ごとに使う型の組み合わせと、最初に手をつける場面が出ます。1分ほどで終わります。結果は、お名前・会社名・メールアドレスを入れると表示されます(無料)。
04注意点:フレームワークを入れても変わらない会社
フレームワークを入れたのに営業が変わらない会社には、共通する使い方があります。
- 名前だけ入れる。「BANT で聞いて」と言っても、何が取れたら次に進むかの線がなければ、聞いて終わります。フレームワークがくれるのは聞く項目までで、合否の線は自社で引きます
- 同じ場面の型を、いくつも入れる。③の見極めの型を2つ以上同時に使うと、項目が重なって記入が増え、誰も書かなくなります。見極めの型は1つに絞ります
- 場面の違うものを比べる。「BANT と SPIN、どちらがいいか」は比べるものではありません。項目の型と聞き方の型は、組み合わせて使います
- 性格の型で、相手を決めつける。ソーシャルスタイルや DiSC は、見立てを持って会うための道具で、相手を分類して終わる道具ではありません。一度の面談で決めたタイプに引きずられると、相手の別の面を聞き逃します
- 研修を受けて終わる。営業研修は、受講後に自分の案件で使い、上司やチームで振り返る場がないと元に戻ります。研修の会社の多くが、受講後のコーチングや継続的なトレーニングをセットにしているのはそのためです
- 記録が残らない。項目を決めても、商談のたびに人が CRM に書き写すのでは続きません。商談の録音から各項目が取れたかを埋め、CRM に記録するところは AI に任せられます。その商談を進めるか、何を合格とするかの判断は人が持ちます
05よくある質問と、まとめ
よくある質問
Q. 結局、最初に1つ入れるならどれですか?
③の見極めの型です。見極めの項目が決まると、⑥の見込みの定義と、⑤の商談で何を聞きに行くかが決まります。商談1回で決まるなら BANT、決裁者が別にいて複数回かかるなら MEDDIC から始めてください。
Q. 海外のフレームワークは、日本の商習慣に合いますか?
項目はそのまま使えます。ただし日本の法人営業では、決裁が稟議で複数の人を通ることが多く、「決裁者は誰か」だけでなく「どういう流れで決まるか」(MEDDIC の Decision Process)を聞くほうが実態に合います。
Q. 予算を最初に聞くのは、失礼ではありませんか?
直接聞くと、商談が止まることがあります。「同じような取り組みに、これまでどのくらいかけてきましたか」のように、過去の実績から聞くと答えてもらいやすくなります。課題から聞く CHAMP の順番も使えます。
Q. 相手の性格のタイプは、1回の商談で分かりますか?
初回は仮置きで十分です。話し方(結論から話すか、経緯から話すか)と、決め方(その場で決めるか、持ち帰るか)を見ておき、2回目以降で直します。個人ニーズは本人に直接聞きにくいので、「この取り組みがうまくいくと、ご自身にとってはどうなりますか」のように、本人の立場で聞きます。
Q. 研修と、本やネットで学ぶフレームワークは何が違いますか?
中身の考え方は重なるものが多くあります。違いは練習の仕組みです。研修は、ロールプレイや自分の案件を使った練習、受講後の振り返りまでがセットになっています。
Q. フレームワークの記入は、AI に任せられますか?
商談の録音や議事録から、各項目が取れたかどうかを埋めるところまでは任せられます。その商談を進めるか、育成に戻すかは人が決めます。顧客の個人情報を含む録音を外部の AI サービスに入れる前に、利用目的と扱いを決めてください。
まとめ:フレームワークは「どこで詰まっているか」で選ぶ
- まず自社の営業が、6つの場面のどこで詰まっているかを決める。フレームワークは、そのあとに選びます。
- 見極めの型は、商談の回数と決める人の数で選ぶ。1回で決まるなら BANT、複数回かかり決裁者が別にいるなら MEDDIC 系です。
- フレームワークがくれるのは「聞く項目」まで。何が取れたら次に進むかの線は、自社で引きます。
どの型を使うかは、会社によって違って構いません。大事なのは、選んだ型の項目で、商談を進めるかどうかを判断できる状態にすることです。
この記事を書いた人
本記事の数値・制度は2026年11月時点のものです。各社の取り組みは公開情報をもとに Zeyra が整理しました。引用・転載は出典(https://zeyra.co.jp/column/sales-framework/)を明記のうえ、ご自由にどうぞ。
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無料相談(30分)を申し込む出典・参考
- 福田康隆『THE MODEL』翔泳社、2019年 shoeisha.co.jp
- HubSpot「GPCT sales qualification」 blog.hubspot.com
- BANT の起源(IBM、年代は説が分かれる) builtin.com(二次情報)
- MEDDIC の起源(PTC 社) umbrex.com(二次情報)
- ソーシャルスタイル理論 recurrent.co.jp / TRACOM tracom.com
- Everything DiSC「Our Story」 everythingdisc.com
- Huthwaite International「SPIN Selling course」 huthwaiteinternational.com
- Matthew Dixon, Brent Adamson『The Challenger Sale』2011年 penguinrandomhouse.com
- Korn Ferry による Miller Heiman Group の買収(2019年) ir.kornferry.com
- Robert B. Miller, Stephen E. Heiman『Conceptual Selling』1987年 nypl.org
- Sandler「David Sandler」 sandler.com
- ValueSelling Associates valueselling.com
- Force Management「MEDDICC」 forcemanagement.com
- Stripe「Net revenue retention」 stripe.com
- 6つの場面の分け方、選び方の分岐、会社の型ごとの組み合わせ例、診断の振り分けは筆者の整理(2026年11月時点)