ZEYRA
採用パートナー 無料相談(30分)↗

COLUMN

調査(RESEARCH)全社・AI の使い方読了 約20分

アーティファクトで会議をする時の4つの注意点|パワポの次に起きていること

たとえば、明日の会議の資料をAIに頼んで作った場面です。見出しがつき、表が並び、色分けまでされた資料が、短い時間で出来上がります。ところが会議で画面に映してスクロールしながら説明すると、聞き手はカードのタイトルから内容を推測しながら聞く状態になりがちです。AIで資料を作る時代に、新しく出てきた問題です。

背景には、会議の主役の移り変わりがあります。2026年に入って、McKinsey は数百枚のスライドを約70人向けの Web ページ1つに置き換え、Anthropic と OpenAI は共有リンク上で複数人が一緒に編集する機能を相次いで発表しました。分析も共有も進行も、共有リンクで開く「生きたページ」の上で行う流れが見えてきています。

この記事は、会議や提案の資料づくりに生成AIを使い始めた、従業員10〜300名の会社の経営者・部門長・人事・情報システム担当に向けた調査記事です。公開情報で流れを確かめ、会議で使うときの4つの注意点と、社内向け・クライアント向けにそのまま使えるルール表をまとめました。

この記事で得られること
  • 会議の主役は、スライドから共有リンク上のページに移りつつあります。McKinsey は数百枚のスライドの代わりに、約70人が同じ最新情報を見られる Web ページを作りました。スライドは最終成果物の一形態として残ります(2章・3章)
  • 注意点は4つ。情報量、話す順番、発表者の理解、共有リンクの範囲です。AIが整えてくれるぶん、会議の場で起きる問題の種類が変わります(4章)
  • 準備の一発目はAIに任せ、人は削る・確かめる・順番と範囲を決めることに時間を使います。そのまま使える社内向け・クライアント向けのルール表とチェックリストをつけました(5章)

01調べたこと:対象・方法・限界

この記事で「アーティファクト」と呼ぶのは、AIとの会話から作られる、文書・図表・ダッシュボード・小さなアプリのような成果物のことです。ファイルとして送らず、共有リンクで開いて見ます。Claude の機能名としても使われる言葉ですが、ここでは ChatGPT の Pages のような同種のものも含めて、「共有リンク上の生きたページ」という意味で使います。

対象と方法

対象は3つです。コンサルティング会社の動き(McKinsey、EY、アクセンチュアを扱った取材動画)、AIツールを出している会社の動き(Anthropic、OpenAI、Gamma)、そして会議と共有リンクに関する公開情報(Amazon の株主向け書簡、AI生成資料の質をめぐる調査、Claude の共有リンクをめぐる報道)です。ニュース記事、各社の公式ヘルプ、株主書簡を読み、事実と、各社の発言や第三者の推計を分けて整理しました。そのうえで、会議の現場で起きやすい問題を、観察として加えています。

限界

確認できたことと、できていないことを分けると、次のとおりです。

SCOPEこの記事で確認できたことと、確認できていないこと
公開情報で確認できたこと
  • McKinsey が、パワーポイントの使用が大きく減ったと説明している
  • 約70人向けの Web ページ(可視化ハブ)を作った案件がある
  • Anthropic と OpenAI が、共有リンク上で共同編集する機能を発表した
  • Claude の共有リンクが Google 検索に出た事案が報じられた
確認できていないこと
  • Anthropic 社内での、これらの機能の使われ方
  • 「会議でスクロールされると頭に入らない」ことを直接測った調査
  • Gamma の売上など、第三者の推計の確かさ
  • 日経クロステックの動画にある細かい数字(引用していません)
図1 左は出典つきで書ける部分。右は推測や観察にとどまる部分で、本文では断定しない。

各社のサービスは更新が速く、この記事は2026年10月時点の公開情報です。導入前に、公式の最新情報を確認してください。4章の注意点は、公開情報で裏づけられる部分には出典をつけ、それ以外は筆者の観察と考えとして書いています。

02結果1:大手とAI各社が、同じ方向に動き始めた

会議の資料といえば、パワーポイントのスライドでした。2025年から2026年にかけての動きを時系列に並べると、分析や進行の場が、共有リンクで開くページに寄っていく流れが見えます。

TIMELINE共有リンク上のページへ向かう動き(公開情報)
2025年6月McKinsey の社内AI「Lilli」

月次で使う社員は75%以上。提案書やスライドの下書きにも使われている

Fortune の報道
2026年6月McKinsey の可視化ハブ

約70人が同じ最新情報を見られる Web ページを作った。パワーポイントの使用は大きく減ったと説明

Business Insider Japan
2026年9月16日Anthropic が発表

Claude Docs と Claude Slides(ベータ)。共有リンク上で、複数人が同時に編集できる

VentureBeat
2026年9月29日OpenAI が発表

ChatGPT Space。Pages を、社員とAIがリアルタイムで一緒に編集できる

VentureBeat
図2 日付は、報道の公開時期か発表日。コンサルティング会社の事例の報道が先に出て、AI各社の発表が続いた。

McKinsey:数百枚のスライドを、Web ページ1つに置き換えた

一番具体的なのは McKinsey の例です。Business Insider Japan の2026年6月17日付の記事によると、同社のテクノロジー・AI責任者であるケイト・スメイジ氏は、社員がAIツールで自分でページやアプリを作り始めてから数か月で、パワーポイントの使用が大きく減ったと述べています。作るプレゼンの数も、ソフトを使う時間も減りました。パワーポイントは日々の作業の起点ではなく、プレゼン・メール・メモといった最終成果物を作るための道具になったという説明(可視化ハブを作ったエンゲージメントマネージャーの発言)です。

記事には具体的な案件も出てきます。あるプロジェクトでは、リアルタイムで情報を把握したい関係者が約70人いました。従来のスライドのままだと、送ったあとに複数の版が出回り、人によって違う版を見て作業していました。数百枚のスライドから必要な情報を探すのも非効率でした。そこでエンゲージメントマネージャーが、最新の作業内容を1か所にまとめる「クライアント向けの可視化ハブ」を作りました。社内で承認された仕組みで公開し、見られるのはプロジェクトの関係者だけです。進捗に合わせてリアルタイムで更新されます。

約70人McKinsey の案件で、同じ最新情報を見る必要があった関係者の人数
75%以上McKinsey の社内AI「Lilli」を月次で使う社員の割合(2025年6月時点・Fortune)
約2週間Anthropic(2026年9月16日)と OpenAI(9月29日)が、共有リンク上で共同編集する機能を発表した間隔

Fortune の2025年6月の報道では、Lilli は提案書やスライドの下書きにも使われています。スメイジ氏は、アナリストの大軍にパワーポイントを作らせ続ける必要はなく、技術が代わりにできる、という趣旨の発言もしています。

Anthropic と OpenAI:共有リンク上で一緒に作る機能を出した

VentureBeat の2026年9月16日付の記事によると、Anthropic は Claude Docs と Claude Slides をベータ版として発表しました。文書やスライドはウェブ上の共有リンクに置かれ、最初は自分だけが見られます。そこから、名前を指定した人、または組織内に共有して、同時に編集できます。Claude Slides はパワーポイントや PDF で書き出せます。Docs・Slides・Design は1つの共有リンクにまとめられ、スマートフォンからも編集できるとされています。

OpenAI も2026年9月29日、ChatGPT Space を発表しました。VentureBeat によると、Space は ChatGPT で作った Pages やファイルの共有の場で、Pages は文章・画像・グラフ・動く道具を1つの文書にまとめ、社員とAIがリアルタイムで一緒に編集できます。共同編集できるスライドや表計算は「これから」と書かれています。

ここで言えるのは、Anthropic が自社の製品をこの方向に動かしている、というところまでです。Anthropic 社内での使われ方は、公開情報では確認できませんでした。

Gamma:スライドの形そのものを変えた会社も伸びている

スライド作成AIの Gamma は、固定の16:9ではなく、高さが自由に変わるカード状のブロックで、ウェブページのように見せる形を取っています。調査会社 Sacra の推計では、年間売上は2025年10月に約1億ドルに達し、2025年11月に評価額21億ドルで資金を調達しました。ウェブ型の資料が使われ始めていることを示す一つの材料ですが、第三者の推計なので、McKinsey の例ほど確かな数字ではありません。

03結果2:スライドは消えない。変わるのは主役の位置

「パワポはもう要らない」という言い方を、よく見かけます。しかし上の事例を読むと、消えているわけではありません。McKinsey も、スライドを最終成果物としては使い続けています。Anthropic が作った Slides も、パワーポイントに書き出せる作りです。起きているのは役割の分け直しで、場面ごとに整理すると次のようになります(整理は筆者のものです)。

SHIFT場面ごとの、これまでとこれから
分析の途中経過

これまでスライドに貼って送る

これから共有リンク上のページに置いて、更新し続ける

関係者への共有

これまでファイルをメールで送る。版が増える

これからリンクを渡す。誰でも最新を見る

会議の進行

これまで1枚ずつ送りながら説明する

これからアジェンダの順に、ページ上の見るべき場所を示す

最終成果物

これまでスライド

これからスライドも使う。ページを書き出すことも多い

図3 主役が「ファイル」から「共有リンク上のページ」に移る。スライドは、最終成果物の形として残る。

先例:Amazon は、スライドを使わない会議を2017年に公開している

スライドを使わない会議は、新しい考えではありません。Amazon は2017年の株主向け書簡で、同社ではパワーポイントなどのスライド形式の発表は行わないと書いています。代わりに、物語の形で書いた6ページのメモを用意し、各会議の冒頭に全員で静かに読みます。「会議の冒頭に、全員が同じものを読む時間を取る」という進め方は、アーティファクトにもそのまま使えます。5章のルールに入れました。

資料を作る仕事の価値は下がり、人に残るのは別の仕事

Business Insider Japan が2026年3月4日に報じた EY の記事では、若手が担ってきたスライド資料の作成やデータ分析では、AIエージェントが強力な競合に見えると書かれています。同じ記事で EY のグローバルコンサルティング責任者は、コンサルタントはプレゼン資料の作成などに使う時間を減らし、インサイトの解釈や成果づくりに時間を使うようになる、という見通しを語っています。

日経クロステックの取材動画(「【アクセンチュア】AIが迫るパワポコンサルの終焉」)も同じ論点を扱っています。動画によれば、AIに置き換わりやすいのは、情報収集・情報の整理・資料作成だけを担う仕事だという見方があり、提案書を作ること自体は目的ではない、という現場の声が紹介されています。人に残るのは、成果までやり切ることと、人を動かすことだという流れです。細かい数字は、確認できていないため引用しません。

ROLES資料づくりをめぐって語られている、AIに寄る仕事と人に残る仕事
AIに置き換わりやすいと言われる仕事
  • スライド資料の作成
  • データ分析
  • 情報収集・情報の整理だけを担う仕事
人に残ると言われる仕事
  • インサイトの解釈
  • 成果までやり切ること
  • 人を動かすこと
図4 EY の記事と日経クロステックの動画で語られた分け方(2026年10月時点)。

McKinsey の「作る物が変わる」と、EY や日経クロステックの「人の役割が変わる」は、同じことを別の角度から言っています。資料を作る時間が減ったぶん、人は何を見せるか、どう伝えるか、何を決めるかに時間を使う。4章と5章は、その具体的な中身です。

共有リンク上のページが会議に向く3つの理由

版が1つになります。McKinsey の例にあったように、送ったあとに複数の版が出回る問題がなくなります。リンクを開けば、いつでも最新です。

会議の途中で、見せ方を変えられます。質問が出たら、その場で表を絞り込む、別のカードを開く、AIに「この数字の内訳を出して」と頼む、といった動きができます。ファイルのスライドは、作った時点の見せ方で固定されます。

準備の手間が小さくなります。1枚ずつ整えるより、AIに素材を渡して全体を作らせるほうが速く、会議のあとに追記もしやすくなります。

ただし3つ目の裏返しが、この記事の本題です。作るのが簡単になると、情報はいくらでも増やせます。AIが整理して見た目を整えてくれるので、量が多くても散らかって見えません。そのため、作った本人も、情報量が多すぎることに気づきにくくなります。

04結果3:会議で使うときに出てくる、4つの注意点

4つの注意点は、会議の現場で起きやすい問題を出発点に、公開情報で裏づけられる部分には出典をつけて整理したものです(対策は5章にまとめました)。会議の場で起きる順に並べると、次のようになります。

CAUTIONS会議で使うときの4つの注意点と、先にやること
注意点1 情報量

会議の場で起きること聞き手がカードのタイトルから推測しながら聞いている

先にやること読む範囲と目安時間を事前に伝える。最初の1画面に要点を収める

注意点2 話す順番

会議の場で起きることいま全体のどこの話か分からない

先にやることページの最上部にアジェンダを置き、場所を声に出して進める

注意点3 発表者の理解

会議の場で起きること質問に答えられない

先にやること全部読み、自分の言葉で説明できない部分は削る

注意点4 共有範囲

会議の場で起きることリンクが意図しない人に見られる

先にやること指名か組織内を既定にし、載せないものを決める

図5 1と2は「伝わらない」問題、3は「中身が薄いまま通ってしまう」問題、4は「外に出てしまう」問題。3が最も危ない。

注意点1:情報量が多くなりすぎる。読む範囲を先に決めて、先に渡す

AIに頼むと、整った資料が早くできます。見出しがつき、表になり、色分けされ、カードに並びます。整理されているので、量が多くても、作った本人は「きれいにまとまった」と感じます。

ところが、これを会議で画面に映して上から順にスクロールすると、聞き手は読む時間がありません。説明を聞きながら、カードのタイトルだけを見て中身を推測することになります。大事な前提を読み飛ばしたまま、話が進むことがあります。

対策は次の4つです。

読む範囲を、事前に伝える。「ここからここまで読んできてください」と、見出し名で範囲を示します。ページ全体を読ませる必要はありません。

事前に送る。会議の前に渡しておきます。説明しながら初めて見せる形は避けます。事前に読めない人がいる場合は、会議の冒頭に読む時間を取ります。

要点を、最初の1画面に収める。スクロールしなくても、結論・決めてほしいこと・前提の3つが見える状態にします。詳細は、その下に置きます。

読む量の目安を書く。「読了の目安10分」のように、ページの上に書いておきます。Amazon が会議の冒頭に静かに読む時間を取っているように、読む時間は会議の一部として扱います。

AIは、載せられる情報をいくらでも増やせます。だから、載せない情報を決めるのは人の仕事です。「この会議で決めたいことに関係があるか」で、載せるかどうかを判断します。関係の薄い情報は、別ページに置いてリンクにします。

注意点2:話す順番と伝え方が後回しになる。アジェンダを先に示す

スライドは、1枚ずつ送るので、話す順番が自然に決まりました。共有リンク上のページは、全体がいつでも見えるので、順番が決まらないまま話し始められます。聞き手は、いま全体のどこの話なのかが分からなくなります。

対策は基本的なことです。ページの最上部に、アジェンダと話す順番を置きます。最初に、会議のゴール(何を決めたいか)と前提を1分で共有します。話し始める前に、「いまからこの見出しの話をします」と場所を声に出します。カードの順番と話す順番はそろえ、ずれる場合は先にそう伝えます。1つの話が終わるたびに、「ここまでで質問はありますか」と区切ります。

もう一つ、伝え方を鍛える必要があるということです。資料の質はAIで上がります。だからこそ、同じ資料を使っても、伝え方で差がつくようになります。資料の出来は、もう差になりにくいからです。話す順番を組み立てる、聞き手の理解度を見て説明の深さを変える、といった力は、人が磨く部分として残ります。

注意点3:発表者が中身を理解しきれていない。AIの出来が良すぎることが、リスクになる

一番危ないのは、これです。AIに頼むと、自分が思い描いていた以上のものが出来上がることがあります。構成は立派で、数字も入っていて、結論ももっともらしい。ところが、発表する本人が、書かれている内容をすべて理解していない。この状態で会議を始めると、質問に答えられません。書かれている内容を理解していないと、会議として成り立たないのです。

これは個人の失敗にとどまらず、組織の生産性にも影響すると考えられています。BetterUp と Stanford Social Media Lab の調査を Harvard Business Review が2025年9月に紹介し、「workslop」という言葉でこの問題を整理しました。見た目は整っていて完成しているように見えるのに、中身が役に立たないAI生成の成果物のことです。

40%過去1か月に workslop を受け取ったと感じる人の割合(米国のデスクワーカー)
15.4%受け取る仕事のうち、workslop だと推定される割合
1時間51分workslop 1件に対処するのにかかる平均時間。1人あたり月186ドルの負担と試算

調査は2025年9月に行われたものです。米国の話であり、会議資料に限った調査ではありません。ですが、「整っているのに薄い」成果物を受け取った側が、確かめ直すために時間を使う、という構図は、会議の準備にもそのまま当てはまります。

対策は、出す前に、人が自分の言葉で説明できるところまで読み込むことです。AIが書いた資料を会議で使うときの最低限の条件は次のとおりです。全部を読み、流し読みで終わらせない。数字には、出どころをたどれるようにしておく。自分の言葉で3分で説明できない部分は、削るか、理解してから載せる。「ここを突かれたら答えられない」と思う箇所を、先に洗い出す。AIが勝手に付け加えた主張がないかを確かめる。

手間は増えますが、ここを省くと、会議の場で信頼を失います。クライアント向けの会議では、特に影響が大きくなります。

注意点4:共有リンクの範囲を決めていない。便利さの裏にある漏えいのリスク

共有リンクは便利ですが、範囲を決めずに使うと、意図しない人にまで見られるおそれがあります。実際に起きた事案があります。

eWeek の2026年8月3日付の記事(TechCrunch の報道を引用)によると、2026年7月下旬、Claude の共有チャットとアーティファクトが Google 検索の結果に出てくることが分かりました。健康記録や社内の文書にあたるものも含まれていたと報じられています。アカウントが乗っ取られたわけではありません。原因は、「リンクを知っている人なら誰でも見られる」という共有の仕様と、そのリンクが公開フォーラムや SNS など、検索に拾われる場所に載ったことだとされています。

この事案は、サービスの優劣を示すものではありません。「リンクを知る全員」の形で共有したものは、リンクが広まれば誰にでも見られ得る、という共有リンク一般の性質を示しています。共有の範囲は、狭いほうから次の3段階で考えると決めやすくなります。

SCOPE OF LINKS共有リンクの範囲:狭いほうから3段階
いちばん狭い指名した相手のみ

名前を指定した人だけが開ける。クライアント向けの基本(相手の組織内のみでもよい)

基本
次に狭い組織内のみ

同じ組織の人が開ける。社内向けの既定

社内の既定
いちばん広いリンクを知る全員

リンクが広まれば、誰にでも見られ得る。選ぶのは、理由があるときだけ

理由があるときだけ
図6 共有リンクの範囲。下に行くほど広く、漏えいのおそれも大きい。

Claude のヘルプセンターによると、Team と Enterprise のプランでは、アーティファクトは既定で組織の中にとどまります。「リンクを知る全員」に開く設定は、オーナーが外部共有を許可している場合に限られ、オーナーが止めると、そのリンクは使えなくなります。開けるのは、リンクを持つ Claude のログイン済みの人です。また、チャットで作ったアーティファクトを共有すると、見る人は、そのチャットに添付されたファイルにもアクセスできる場合があります。公開を取り消すと、そのアーティファクトが使っていたデータも削除され、取り消したものは再公開できません。

仕様はサービスごと、プランごとに違い、頻繁に更新されます。だからこそ、「自社では、どの範囲まで共有してよいか」を、会社として先に決めておく必要があります。クライアントによって、社内の情報セキュリティの規程も違います。クライアントごとに「共有していいもの・いけないもの」を決めておくと安全です。

05そこから言えること:準備は人が磨く。そのまま使えるルールとチェックリスト

準備の一発目はAI、磨くのは人、渡し方まで設計する

4つの注意点を踏まえると、会議の準備は、次の3つに分けて考えるとうまくいきます。

3 STEPS会議の準備:AIの一発目から事前共有まで
手順 1AIが一発目を作る

素材を渡して、構成・表・要点の下書きを出させる。ここは速く、量を出してよい

AI 注意点1の「量」が増える段階
手順 2人が磨く

全部読む。削る。要点を最初の1画面に絞る。数字の出どころを確かめる。自分の言葉で説明できるか試す。話す順番を決める

人 注意点1・2・3に答える段階
手順 3範囲を決めて事前に共有する

読む範囲と目安時間を書く。共有リンクの範囲を確認する。載せてはいけない情報が混ざっていないか見る

人 注意点1・4に答える段階
図7 一発目はAIに任せる。人の時間は、削る・確かめる・順番を決める・渡す範囲を決めることに使う。

陥りやすいのは、手順1だけで終わらせることです。AIが一発で出した資料は、見た目が整っているので、そのまま会議に出せそうに見えます。しかし、会議の質を決めているのは、手順2と3に人がどれだけ時間をかけたかです。

AIに任せる部分と、人に残す部分を分けて考える方法は、組織デザインでも土台にしている考え方です。何をAIに任せ、何を人が決めるかを先に決めておくと、準備の時間は読み込みと伝え方に回せます。

共有リンク上のページの使いどころと、運用して確かめた目安

運用して確かめた目安

私たち Zeyra は、AI前提の組織設計を支援する会社です。会議や進行の材料の多くを、共有リンクで開くページとして作って運用しています。使いどころの目安は次の4つです。

  • 方針や計画の整理。更新が続く材料は、ファイルを送らず1つのページに集約する。版が1つになる。
  • 定例の議題と進捗。定例ごとに議題と進捗をまとめたページを用意し、前回の続きに追記する形にする。
  • 進捗と判断待ちの見える化。AIが進めた作業と、人が決めるべき論点を、1つのページで見られるようにする。
  • 読者向けの診断ツール。このコラムの1本目の記事(AI活用レベルの決め方)では、読者が自社のAI活用レベルを約10分で診断できるウェブアプリを、共有リンクで公開しています。記事を読んだあとにその場で動かせる、生きたページの一例です。

準備の手間が小さくなる一方で、会議の場では別の問題が出ます。情報量の多いページを画面でスクロールしながら説明すると、聞き手がカードのタイトルから内容を推測しながら聞く状態になりがちです。アーティファクトは綺麗に整理してくれます。だから、情報量がどうしても多くなります。これが、4つの注意点の出発点です。

社内向けとクライアント向けのルール表

ここからは、そのままコピーして使えるように整理します。まず、社内向けとクライアント向けの違いを表にします。自社の方針に合わせて、書き換えてください。

項目社内向けクライアント向け
事前共有会議の前日までにリンクを渡す。読む範囲と目安時間を添える相手の規程を先に確認する。事前に渡せない場合は、冒頭に読む時間を取る
冒頭の黙読事前に読めていない人がいれば、冒頭5〜10分を黙読にあてる(目安)同じ。相手が初見のページは、冒頭の黙読を原則にする
話す順番ページの最上部にアジェンダを置き、その順に話す同じ。最初にゴールと前提を示す
共有リンクの範囲「組織内のみ」を既定にする指名した相手のみ、または相手の組織内のみを基本にする。「リンクを知る全員」は、理由があるときだけ
載せるもの議題・根拠・決めたいこと議題・根拠・決めたいこと。相手にとって必要な範囲だけ
載せないもの個人の評価・報酬、他の案件の情報、秘密情報左に加えて、他のクライアントの情報、社内向けの検討メモ、AIとのやり取りの履歴
会議のあと決まったことを追記し、要らない共有は止める共有を続けるか止めるかを決め、止める場合は相手に伝える

このルール表は、一つのひな形です。会社の規模や業種によって、変える必要があります。書き換えるときは、サービスの共有設定の最新の仕様を、公式のヘルプで確認してください。

会議の前後で確認する、チェックリスト

会議の前に、発表者が次を確認します。

  • 全体を自分で読み、自分の言葉で説明できない部分を削った(または理解した)
  • 最初の1画面に、結論・決めてほしいこと・前提が収まっている
  • アジェンダと話す順番が、ページの最上部にある
  • 「ここからここまで読んできてください」の範囲と、読む目安の時間を書いた
  • 数字と主張に、出どころをたどれる情報がついている
  • 共有リンクの範囲(指名・組織内・リンクを知る全員)を、意図して選んだ
  • 載せてはいけない情報(個人の評価・報酬・他社の情報・秘密情報)が混ざっていない
  • チャットで作ったページの場合、元のチャットに共有したくない添付ファイルがない

会議の冒頭と最中には、次のことを行います。

  • 最初に、会議のゴールと、今日の読む範囲を声に出して確認する
  • 事前に読んでいない人がいれば、黙読の時間を取る
  • 話し始める前に、いまの見出しの名前を声に出す
  • 質問が出たら、ページ上の該当箇所を開いて答える。答えられないことは、その場で認めて持ち帰る

会議のあとには、次のことを行います。

  • 決まったことと次の担当を、ページに追記する
  • 最終成果物が必要なら、ここでスライドや PDF に書き出す
  • 共有リンクを続けるか、止めるかを決める。止める前に、データが消えてよいか確認する

やってはいけないこと

  • 共有リンクを、公開の場に貼る。公開の掲示板や SNS、誰でも見られるチャンネルに貼ると、検索に拾われるおそれがあります。
  • AIが作ったページを、読まずに出す。発表者が説明できない内容が混ざり、質問で信頼を失います。
  • 最初に見せるものを決めずに、画面を上から順にスクロールする。聞き手が、タイトルだけで内容を推測する状態になります。
  • クライアントごとのルールを確認せずに、同じ共有設定を使い回す。相手の規程で禁止されている共有方法かもしれません。
  • 個人の評価や報酬、他社の情報を、ページに載せる。共有範囲を間違えたときの被害が最も大きい情報です。

クライアントごとに、先に決めておく項目

クライアント向けのルールは、一律には決められません。相手の会社の規程や、担当者の使っているツールによって、できることが変わるからです。次の項目を、案件の最初に相手と確認しておくと、後で慌てずに済みます。

確認すること決めておく内容
リンクでの共有が許されるか許される/許されない。許されない場合の代わりの方法(PDF など)
閲覧に必要なもの相手のアカウントが要るか。要る場合の準備
相手の社内への転送してよい範囲。リンクを他の人に渡してよいか
載せてよい情報の範囲数字・固有名詞・個人名の扱い
共有を止める時期会議のあとすぐか、案件が終わるまでか
窓口の担当者共有範囲を決める人。迷ったら聞く相手

06よくある質問と、まとめ

よくある質問

Q. アーティファクトとは何ですか?

AIとの会話から作られる、文書・図表・ダッシュボード・小さなアプリのような成果物です。ファイルとして送らず、共有リンクで開いて見ます。Claude の機能名としても使われていますが、この記事では ChatGPT の Pages のような同種のものも含めて、「共有リンク上の生きたページ」の意味で使っています。

Q. パワポはもう作らなくていいのですか?

最終成果物としてのスライドは、今も必要な場面があります。変わるのは、途中の分析や会議の進行の主役が、共有リンク上のページに移る点です。McKinsey も、スライドを最終成果物としては使い続けています。

Q. 会議の資料を事前に共有しても、読んでこない人がいる場合はどうしますか?

読む範囲を絞り、目安の時間を書いて、最初の1画面に要点を収めると、読まれやすくなります。それでも読んでこない人がいる前提で、冒頭に読む時間を取る進め方にしておくと、会議が成り立ちます。

Q. アーティファクトの共有リンクは、どの範囲で共有するのが安全ですか?

基本は、指名した相手のみ、または組織内のみです。「リンクを知る全員」は、広まったときに誰でも見られ得るので、理由があるときだけにします。サービスごとに仕様が違うので、導入前に公式のヘルプを確認してください。

Q. 共有リンクのルールは、誰が決めるのですか?

共有範囲と載せない情報は、会社として決めておくのがよいです。個人の判断に任せると、人によって基準が変わります。

まとめ:資料づくりをAIに渡したぶん、人は「見せ方と範囲」を決める

  1. スライドは最終成果物に下がり、途中の分析と進行は共有リンク上のページに移る。McKinsey も、Anthropic と OpenAI の新機能も、同じ向きを指している。
  2. AIの出来が良いほど、削る・理解する・範囲を決める作業が重くなる。情報量、話す順番、発表者の理解、共有範囲の4点が、会議の質を左右する。
  3. 最初の一歩は3つ。次の会議のページに読む範囲と目安時間を書く。共有リンクの範囲を意図して選ぶ。自社とクライアントごとに、載せていいものといけないものを一覧にする。5章のルール表を書き換えて使えます。

AIが仕事を持つほど、人に残るのは、何を任せ、何を人が決めるかという組織の仕事です。社員のAI活用度を会社としてどう測るかは、AI活用レベルの決め方にまとめています。

この記事を書いた人

太田 壮哉
太田 壮哉Zeyra株式会社 代表

採用・組織人事のコンサルで200社以上、AI系ブティックファームで事業責任者。いまは AI 前提の組織設計を、自社で回しながらクライアントに提供している。

本記事の数値・制度は2026年10月時点のものです。各社の取り組みは公開情報をもとに Zeyra が整理しました。引用・転載は出典(https://zeyra.co.jp/column/ai-artifact-meetings/)を明記のうえ、ご自由にどうぞ。

自社の場合はどうするか、一緒に決めたいとき

御社の会議や案件管理を、AIを前提にどう組み直すか。何をAIに任せ、何を人が決めるかを、工程に分解してお出しします。準備は不要です。

無料相談(30分)を申し込む

コラムの一覧を見る →メソッド(業務別の進め方)を見る →

出典・参考

CONTACT

まず、いまの業務の話から。

御社の業務を工程に分解し、どこから手を入れるべきかを30分でお話しします。準備は不要です。

無料相談(30分)