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業務棚卸とは?一覧で終わらせない「AIに渡す/人に残す」の決め方【フォーマットつき】
- 棚卸の出来は、一覧の行数でなく、工程ごとに渡し先が決まっているかで見る。渡し先は、AIに渡す・人に残す・仕組みに持たせるの3つ
- 決める順番は、人に残す、仕組み、AI。迷う工程は、判断と材料集めに割って考える
- 表は、1本の流れで1枚から。今日の30分で10行書き、判断の有無と渡し先の2列を先に埋める
業務棚卸をして、一覧ができた。共有フォルダに置いて、会議でも見せた。けれど、その一覧を見ても、AIをどこに入れればよいのか決められない。そう感じている会社は少なくありません。
棚卸が役に立つかどうかは、一覧の長さより、工程ごとに渡し先を決めたかどうかで分かれます。
この記事は、従業員10〜300名の会社の経営者・人事・部門長に向けて、業務棚卸とは何かから、「AIに渡す/人に残す/仕組みに持たせる」の決め方、そのままコピーして使える記入表までを書きます。商談準備を7工程に分けた運用の例も、導入前の実測と導入後の設計値を分けて載せます。
- 業務棚卸は、一覧づくりで終わらせず、工程ごとに渡し先まで決める。一覧で止まる理由は、粒度・判断・時間・渡し先を書く列が足りないこと(1章)
- 渡し先は「人に残す→仕組みに持たせる→AIに渡す」の順に決める。Excelやスプレッドシートに貼れる記入表と、5つの手順つき(2章・3章)
- 商談準備を7工程に分けた運用では、人の作業が導入前の4.5時間(実測)から導入後は15分(設計値)に、人の判断は6回から2回にする設計。渡し先の決め方を、実際の工程で確かめられる(5章)
01業務棚卸が、一覧で止まる理由
業務棚卸とは:AI導入の前に、何を決める作業か
業務棚卸とは、会社や部署の仕事を洗い出し、工程に分けて、誰が・どれくらいの時間で・どんな判断をしているかを書き出す作業です。倉庫の棚卸と同じで、何がどこにあるかを確かめるところから始まります。
これまでは、属人化の見える化や、業務改善の下準備として行われてきました。属人化が起きる主な原因の1つは、その人の頭の中で行われている判断が、外から見えないことです。棚卸で「いま誰が」「何を判断しているか」を書き出せば、属人化を解消する最初の一歩になります。
AIを入れる会社では、同じ表にもう1列足します。その工程を、AIに渡すのか、人に残すのか、仕組み(システム)に持たせるのかという列です。これがあると、棚卸は「現状の一覧」から「AIを入れる順番を決める表」に変わります。
一覧で止まる4つの理由
よくあるのは、全部の業務を書き出したところで力尽き、一覧が共有フォルダに眠る流れです。一覧ができたことと、次に何をするかが決まったことは別です。筆者が見てきた範囲では、棚卸が一覧で止まる会社は、次の4つのどれかに当てはまります。
粒度がそろわない。部署名と作業名が混ざると、比べられません。1行は「1人が1回で終える作業」を目安にします。
判断が書かれていない。作業の名前だけでは、人が決めている部分とただ手を動かしている部分が分かれません。AIに渡せるのは後者です。
時間を書いていない。頻度と1回あたりの時間が分からないと、どこから手を付けると効くかを決められません。
渡し先まで決めていない。「AI化候補」と書いて終わると、誰も動きません。工程ごとに渡し先を1つ書き、その理由を1行添えるところまでが棚卸です。
4つの理由は、表の列が足りないことの裏返しです。粒度・判断・時間・渡し先の4列があれば、一覧から次の一手が出てきます。
02工程ごとに決める3つの渡し先
各工程の渡し先は、AIに渡す、人に残す、仕組みに持たせる、の3つです。「仕組み」は、AIを使わなくてもルールで動くものを指します。予定が入ったら起動する、決まった場所に保存する、といったものです。
決める順番:人に残す、仕組み、AIの順
工程の1行ごとに、次の問いを上から順に当てはめます。人に残すかどうかを先に決め、次に仕組み、最後に残った作業をAIに渡します。順番を逆にすると、判断までAIに寄せてしまいます。
棚卸の1行(1工程)ごとに、上の問いから順に当てはめる。当てはまった時点で、その行の渡し先が決まる
例商談そのもの、送るかどうかの判断、顧客との交渉
決めておくことどの時点で人が見るか(判断ゲート)
例予定の検知、保存場所、命名規則、権限、リマインド
決めておくことルールの中身と、それを決める人
例公開情報の調査、資料の下書き、議事録、転記
決めておくこと指示文と、できあがりの置き場
迷った行に印を付けておき、次の相談で決める
1つの工程が、2つに割れることがある
判断ゲートとは、AIが出したものを人が見て、進めるか直すかを決める場所のことです。そして、1つの工程が2つに割れることがある点も押さえてください。たとえば「提案メールを書く」は、下書きはAIに渡し、送るかどうかは人に残せます。判断そのものは人が持ち、判断の材料集めはAIに渡す。この割り方が、棚卸の中心です。
03記入表と進め方:コピーして使えるフォーマット
業務棚卸フォーマット(コピーして使える記入表)
下の表を、そのまま Excel やスプレッドシートに貼って使えます。1行が1工程です。最初の3行は、商談準備を例にした記入例(導入前の状態)です。最後の1行は空欄にしてあります。
| 業務/工程 | いま誰が | 頻度・時間 | 判断の有無 | 段階 | 渡し先 | 理由 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 商談準備/事前調査 | 営業担当が、HP・IR・求人・SNS・ニュースを回る | 商談ごと/1時間 | あり(論点の組み立て)。大半は材料集め | L0 | AIに渡す | 公開情報を集めて文書にする作業で、判断の材料づくり。判断は次の資料確認で人が持つ |
| 商談準備/商談の検知 | 営業担当が、カレンダーを見て新規商談かを判断 | 商談ごと/見落とすと準備が丸ごと遅れる | あり(新規商談か)。基準は決められる | L0 | 仕組みに持たせる | 基準を「件名が【商談】で始まる」と書けるため。ルールは人が決め、動かすのはカレンダー |
| 商談後/提案・お礼メール | 担当者が手で書く | 商談ごと/1時間 | あり(何を約束し、送るか) | L0 | 下書きはAIに渡す。送信の可否は人に残す | 下書きは議事録から起こせる。ただし相手に出るものなので、送る前に人が見る |
| (御社の業務) | 人名でなく役割。休んだら代わりがいるか | 回数/1回の時間 | あり・なし+何を決めているか | L0〜4 | 3つから1つ(割れるなら2つ) | 1行で |
各列の書き方
- 業務/工程。業務名の下に、工程を1行ずつ書きます。1行は「1人が1回で終える作業」を目安にします。1行で1日以上かかるなら割ります
- いま誰が。人名でなく役割で書き、その人が休んだときに代わりがいるかを添えます。代わりがいない行が、属人化している工程です
- 頻度・時間。「商談ごと/1時間」のように、回数と1回の時間を書きます。正確でなくて構いません。大きい順に並べ替えられれば足ります
- 判断の有無。「あり」「なし」だけでなく、ありなら何を決めているかを一言添えます。ここが空欄の行は、人に残す工程が見えていません
- 段階。次のL0〜L4で、その工程が今どこにあるかを書きます
- 渡し先と理由。3つから選び、理由を1行で書きます。理由が書けない行は、まだ決めないでおきます
「いまの段階」:L0〜L4
「いまの段階」には、商談準備のメソッドで使っている5つの段階を使えます。
| 段階 | 呼び名 | どう動くか | 動かすのは |
|---|---|---|---|
| L0 | 手作業 | 人がすべて行う | 人 |
| L1 | AI補助 | 人がチャットに貼り付けて使う | 人 |
| L2 | 半自動 | 人がコマンドで起動する | 人(起動だけ) |
| L3 | 自動実行 | 検知や時刻をきっかけに動く | 仕組み |
| L4 | 自走 | 使う側が自分で直せる状態 | 仕組み+使う人 |
L0の手作業から、L4の自走へ進むほど、動かす主体が人から仕組みへ移ります。
社内の業務を段階で測りたい場合は、AI活用レベルの評価軸の記事と、そのAI活用レベル診断が使えます。診断の「業務のAI化ステージ」は区切り方がこの記事のL0〜L4と少し違いますが、手作業から自動で動くまでを段階で見る点は同じです。
進め方:5つの手順
手順1:範囲を、1つの流れに絞る。会社全体でなく、「商談1件の最初から最後まで」のような1本の流れを選びます。全社の棚卸は、1本分の表ができてからで間に合います。
手順2:工程に割り、時間と判断を書く。見る方向を2つ持ちます。1つは社内に残っているデータ(カレンダー、議事録、チャット、CRM)、もう1つは担当者本人の話です。データだけでは、頭の中の判断が見えません。話だけでは、記憶に頼ります。
手順3:渡し先を、2章の順番で決める。人に残す、仕組みに持たせる、AIに渡す、の順に当てはめます。割れる工程は2つに割ります。
手順4:最初の1本を選ぶ。時間が長く、回数が多く、判断が少ない工程から選びます。洗い出した候補に優先順位を付けるときは、効果と難易度の2軸(ROI×難易度)で見ると決めやすくなります。
手順5:判断ゲートを2つ以内に決めて動かし、表を更新する。人が見る場所を最初に決めておくと、AIが出したものを誰が確認するかで迷いません。動かしたら、時間と段階を書き直します。
今日やること(30分)
1枚目の表をつくる30分の配分。単位:分(30分を100%)
- 棚卸する流れを1本選ぶ(5分)。毎週・毎月必ず発生し、複数の人が触る流れがよいです
- 記入表をコピーして、工程を10行書き出す(15分)。時間は大まかで構いません。「いま誰が」には役割を書きます
- 「判断の有無」と「渡し先」の列だけ、先に埋める(10分)。理由は書けた行だけで構いません。迷った行に印を付けておくと、次の相談がしやすくなります
書いた表をもとに、自社ならどこから手を付けるかを一緒に見たい場合は、お問い合わせから声をかけてください。準備は不要です。
04注意点:やってはいけないこと4つ
棚卸を始めるときに、次の4つは避けます。
- 全部をAIに渡そうとする。判断まで渡すと、間違いに気づきにくくなります。人に残す工程を先に決めます
- 最初から全社でやる。表が大きくなるほど、更新されにくくなります。1本の流れで1枚の表をつくります
- 一度つくって終わりにする。AIで動かした工程は段階が変わります。動かすたびに「いまの段階」と時間を書き直します
- 個人情報を含む工程を、確認なしでAIに載せる。人材や顧客の情報を扱う工程は、AIに入れる範囲と扱い方を先に決めます。人に残すか、扱いが決まるまで載せません
05実践の記録:商談準備で渡し先を決めた例
運用している商談準備の例を、渡し先の観点で見ます。導入前の時間は実測、導入後の時間と判断の回数は設計値です。
商談が1件入るたびに発生する調査・資料作成・CRM登録を、工程に分けて自動化した運用の記録です。メソッドのページ(商談準備をAIに任せる)に公開しています。ここでは、棚卸の観点で読み直します。
Zeyra の商談準備の運用。導入前(手作業。実測)と導入後(検知から自動で実行。設計値)の比較。1商談あたりの人の作業は、商談そのもの(1時間)を除く。単位:時間・分・回(2026年10月時点)
導入後の15分は、商談前の確認10分と送信の可否5分の合計として設計した時間で、導入後の実測は計測中です。導入前の4.5時間は実測です(2026年10月時点)。
| 工程 | 導入前の人の時間 | 渡し先 | 導入後に人がやること |
|---|---|---|---|
| 01 商談の検知 | 見落とすと準備が遅れる | 仕組み | なし |
| 02 事前調査 | 1時間 | AI | なし |
| 03 商談資料作成 | 1時間 | AI(確認は人) | 商談前に目を通す(判断1)10分 |
| 04 CRM登録 | 30分 | AI | なし |
| 05 商談 | 商談そのもの | 人 | 商談に集中する |
| 06 議事録・タスク化 | 1時間 | AI | なし |
| 07 提案資料・お礼メール | 1時間 | AI(確認は人) | 送るかを決める(判断2)5分 |
時間と工程はメソッドのページの値です。「渡し先」の列は、この記事の整理のために筆者が付けました。
7工程を渡し先で分けると、人に残すのは商談そのものと2つの判断で、残りは「材料をつくる」「記録する」「下書きを起こす」作業です。自動化は、調査より先に検知から始めます。検知を人の目に頼ると、後ろの工程を自動化しても、気づくのが遅れた商談は準備なしで臨むことになります。きっかけをカレンダーという仕組みに移すと、この業務は L3(自動実行)になります。順番は、検知、調査、資料、CRMです。
人に残した判断は、商談前の確認と、送信の可否の2つです。AIが作った資料は、人が目を通して論点のずれだけを直します。メールは、送る前に必ず人が見ます。「新規商談とみなす予定」は、件名が【商談】で始まるという命名規則を人が決めています。
商談準備の7工程の導入後の担当と、人の判断(◆)の位置。工程の形は変えず、担当だけを移した。Zeyra の運用。導入後の担当は設計(2026年10月時点)
06よくある質問と、まとめ
よくある質問
Q. 業務棚卸は、どのくらい時間がかかりますか?
1本の流れ(たとえば商談1件の最初から最後まで)なら、半日で1枚つくることを目安にしてください。会社全体を一度に洗い出すと、終わらずに止まります。
Q. 業務棚卸は、Excelとスプレッドシートのどちらでやるのがよいですか?
どちらでも構いません。複数人で書き足すなら、同時に編集できるスプレッドシートが向いています。この記事の表は、そのまま貼り付けられます。
Q. 属人化の解消と、業務棚卸はどう関係しますか?
属人化は、特定の人の頭の中にある判断が外から見えない状態です。「いま誰が」と「判断の有無」の列に、休んだら代わりがいるかを書くと、属人化している工程が見つかります。そのうえで渡し先を決めると、人に頼らず回る形に近づきます。
Q. AI導入を決めていなくても、業務棚卸はやる意味がありますか?
あります。「渡し先」の列を空けたままでも、属人化の点検と、時間のかかる仕事の発見に使えます。AIを入れると決めたときに、列を埋めれば優先順位がつきます。
Q. 業務棚卸をすると、現場が「自分の仕事を取られる」と身構えます。どうすればいいですか?
棚卸の目的は、人でなくてよい作業を手放すことだと伝えてください。表には「人に残す」列があり、判断や関係づくりは人が持つ前提で書いていることを見せると、話しやすくなります。
Q. 全社で業務棚卸をするなら、何から始めますか?
まず1つの流れで表を1枚つくり、AIで動かしたところまで進めてください。その表が、ほかの部署に広げるときの見本になります。
まとめ:棚卸は、渡し先を決めるところまで
業務棚卸の要点を、3つに絞ります。
- 棚卸の出来は、一覧の行数でなく、工程ごとに渡し先が決まっているかで見る。渡し先は、AIに渡す・人に残す・仕組みに持たせるの3つ。
- 決める順番は、人に残す、仕組み、AI。迷う工程は、判断と材料集めに割って考える。
- 表は、1本の流れで1枚から。今日の30分で10行書き、判断の有無と渡し先の2列を先に埋める。
AIが仕事を持つほど、人に残るのは「何を任せ、何を人が決めるか」を決める組織の仕事になります。棚卸の表は、その決め事を書き残す場所です。表を見返すときは、1行が「1人が1回で終える作業」になっているか、「判断の有無」に決めている内容が書いてあるか、頻度と1回の時間が書いてあるか、渡し先が決まり理由が1行あるか、の4つを確かめてください。そろっていなければ、列を足すところから始めます。自社の業務を工程に分けて、どこから手を入れるかを一緒に決めたい場合は、組織デザインの中で行っています。
この記事を書いた人
本記事の数値・制度は2026年10月時点のものです。各社の取り組みは公開情報をもとに Zeyra が整理しました。引用・転載は出典(https://zeyra.co.jp/column/gyomu-tanaoroshi/)を明記のうえ、ご自由にどうぞ。
御社の業務を工程に分けて、「AIに渡す/人に残す/仕組みに持たせる」の振り分けまで一緒に決めます。準備は不要です。
無料相談(30分)を申し込む出典・参考
- Zeyra株式会社「商談準備をAIに任せる。検知から資料・CRM登録まで、人は確認10分」(公開 2026年10月12日)。工程・時間・人の判断2回・L0〜L4は、公開済みのメソッドの値をそのまま掲載。導入前の4.5時間は実測。導入後の15分と人の判断2回は設計値で、導入後の実測は計測中(メソッド側の注記と同じ) /method/meeting-prep
- Zeyra「AI活用レベルの評価軸」記事と診断(業務のAI化ステージ)/column/ai-skill-level-framework
- 記入表の「渡し先」の3分類と、図2の順番は、Zeyra の整理(2026年10月時点)