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COLUMN

調査(RESEARCH)業務・内製化読了 約20分

内製化とは?メリット・デメリットと、AI時代に何を社内に持つかの決め方

ANSWER — この記事の答え
  1. 内製化とは、外注をやめることではなく、判断と改善を社内に持つこと。IT・システム分野では、国の資料も、内製化を、ベンダーへの丸投げから抜け出すことと整理している。作業は、社内の人・外部・AIのどれがやってもよい
  2. AIで、調べる・まとめる・下書きを作る作業が社内に戻ってきた。日本企業の86.4%(「わからない」を除く回答企業のうち)が何らかの業務で生成AIを使う。一方、別の設問では、「利用を禁止している」企業を除く回答企業の27.0%が「組織的な取組はない」と答えた(総務省・令和8年版情報通信白書。2つの割合は母数が違う)。作業が安くなるほど、何を任せ、何を人が決めるかを決める力で差がつく
  3. 何を社内に持つかは、頻度・判断の重さ・社外に出せない情報の3つで仕事ごとに決める。年に数回の専門的な仕事や、自社の強みと関係のない仕事は、外に頼んでよい。頼むときも、基準を示して確認する役は社内に置く

外注費は払っている。けれど、中身を社内で説明できる人がいない。AIを入れたものの、使い道が資料の下書きや議事録で止まっている。内製化を考え始めるのは、こうしたときです。

ただ、内製化を「外注をやめること」と受け取ると、品質が落ちたり、1人に仕事が集まったりして、結局もとに戻ります。内製化とは、外に頼んでいた仕事を、自社で行えるようにすることです。中心になるのは、手を動かす場所よりも、判断と改善を社内に持つことです。

この記事は、従業員10〜300名の会社の経営者・人事・部門長に向けて、内製化とは何かから、メリットとデメリット、内製化しないほうがいい場合、何を社内に持つかを決める判断基準までを整理したものです。国の資料、総務省の白書、IPAの調査の数字と、公開している運用の型をあわせて載せます。

この記事で得られること
  • 内製化とは、外注をやめることではなく、判断と改善を社内に持つこと。作業は、社内の人・外部の会社・AIのどれがやってもよい。外注・アウトソーシング・BPOとの違いも、判断と改善がどちらにあるかで比べられる(1章)
  • AIで作業が安くなるほど、何を任せ、何を人が決めるかで差がつく。日本企業の86.4%(「わからない」を除く回答企業のうち)が何らかの業務で生成AIを使う。一方、別の設問では、「利用を禁止している」企業を除く回答企業の27.0%が「組織的な取組はない」と答えた(総務省・令和8年版情報通信白書。母数が違うため、2つの割合は並べて比べられない。2章)
  • 何を社内に持つかは、判断の重さ・社外に出せない情報・頻度の3つで、仕事ごとに決める。内製化しないほうがいい4つの場合もある。公開している商談準備の型では、人の作業が導入前の4.5時間(実測)から、導入後は15分(設計値)、人の判断は2回にする設計(3章・4章)

01内製化とは。外注をやめることではなく、判断と改善を社内に持つこと

内製化とは、これまで外部に頼んでいた仕事を、自社の中で行えるようにすることです。制作、開発、経理、採用、調査、営業の準備など、対象は業務全般に及びます。

内製化の中心は、手を動かす場所ではない

よくある誤解があります。内製化は、外注を全部やめることではありません。IT・システム分野では、国の資料にも同じ整理があります。デジタル庁ニュースのインタビュー記事(2025年8月27日。デジタル庁と経済産業省の担当者が登場)では、「内製化」は、システムを全部自社で作るという意味ではなく、ベンダーに100%丸投げする状態から抜け出すことだと説明されています。

この整理は、実務に合います。内製化の中心は、次の2つを社内に持つことです。

  • 判断を持つ。何を作るか、どの基準で良しとするか、いつ止めるか、誰に何を約束するか
  • 改善を持つ。結果を見て、手順や基準を直し、次に何を任せるかを決め直す

作業そのものは、社内の人がやっても、外部の会社がやっても、AIがやっても構いません。「何を頼み、出てきたものをどう判断し、次にどう直すか」を社内が持っていれば、内製化は進んでいます。作業を全部社内に戻しても、判断と改善を外部の人に頼ったままなら、内製化とは言えません。

THREE LAYERS仕事を「作業・判断・改善」の3つに分けると、内製化の中心が見える
毎日・毎回作業

調べる、書く、まとめる、転記する。手順が決まっていれば、人でなくてもできる

AIに渡す/外に頼んでもよい
案件ごと判断

進めるか止めるか。何を基準に選ぶか。相手に何を約束するか

社内に持つ
月次・四半期改善

結果を見て、手順と基準を直す。次に何を任せるかを決め直す

社内に持つ(内製化の中心)
図1 上ほど回数が多く、人でなくてもできる。下ほど回数は少ないが、社内に置く価値が高い。内製化とは、下の2つを社内に持つこと。

外注・アウトソーシング・BPOとの違い

言葉の使い方は、会社や業界で揺れます。この記事では次のように使い分けます(使い分けは Zeyra の整理です)。

TERMS内製化・外注・アウトソーシング・BPO・内製化支援の違い
内製化

外に渡すもの渡さない。作業の一部は渡すこともある

判断は誰が社内

改善は誰が社内

向く場面自社の強みに近い仕事、回数が多い仕事

外注(スポット発注)

外に渡すもの成果物1つ(制作物、調査など)

判断は誰が発注側が基準を示し、受け取って確認する

改善は誰が受注側(納品で終わることが多い)

向く場面年に数回の仕事、専門性が高い仕事

アウトソーシング

外に渡すもの業務の一部を、継続して

判断は誰が契約で決めた範囲は受託側

改善は誰が受託側(契約の範囲内)

向く場面定型で量がある業務、自社の強みから遠い業務

BPO

外に渡すもの業務のプロセス一式を、継続して

判断は誰が受託側がかなりの範囲を持つ

改善は誰が受託側

向く場面経理や総務など、プロセス全体を任せたいとき

内製化支援

外に渡すもの立ち上げと教育を、期間を決めて

判断は誰が最初は支援側、徐々に社内へ

改善は誰が最終的に社内

向く場面社内で回せる状態にしたいとき

図2 違いは「作業を誰がやるか」より、判断と改善がどちらにあるか。使い分けは Zeyra の整理。

外注やBPOが悪い選択というわけではありません。判断を社内に持ったうえで使えば、強い手段です。判断ごと渡してしまうと、あとから抜け出しにくくなります。

02調べたこと。国の資料と調査で分かった3つ

内製化について、公開されている資料で確認できることを整理しました。数字はすべて出典があるものだけを使っています(2026年10月時点)。

調べた範囲と、限界

対象は、デジタル庁ニュースの記事2本(2025年8月27日)、IPAの調査2本(「DX動向2025」と、国内企業1,799社を対象にした2026年7月16日公表の調査)、総務省の令和8年版情報通信白書の企業のAI利用の章です。公開している運用の型は、実践の記録として別に見ました。

限界もあります。国の資料の数字はIT・システム分野が中心で、業務全般の外注比率を示すものではありません。「内製化すればコストが下がる」と言い切れる公開データも、私たちは確認できていません。

SCOPE何を調べ、何が分かり、どこまでが限界か
  • TOPIC内製化とは
    • Aデジタル庁ニュース・IPA「DX動向2025」IT・システム分野の丸投げ
      • 分かったことITエンジニアの所属の偏り。DX人材の不足
      • 限界業務全般の外注比率を示すものではない
    • B総務省の白書・IPA「DX動向2026」企業のAI利用の現状
      • 分かったこと使う会社は増えたが、組織的な取組は途上
      • 限界内製化のコストや効果を直接示すものではない
    • C公開している運用の型実践の記録
      • 分かったこと作業・判断・改善に分けると、どこを社内に持つかが決めやすい
      • 限界公開している型1つ。導入後の数字は設計値で、実測は計測中。他社で同じ結果になるとは限らない
図3 調べた3つのまとまりと、それぞれの限界。この記事の主張は、ここに書いた範囲に限る。

結果1:IT分野では、丸投げの影響が先に出ていた

内製化という言葉は、IT・システムの分野で先に広まりました。丸投げの影響が、数字に出やすかったからです。確認できたものを4つ挙げます。

  1. 日本のITエンジニアは、ベンダー側に7割が偏っています。デジタル庁ニュースの記事(2025年8月27日)によると、ユーザー企業側が3割、ベンダー側が7割です。米国は逆で、ユーザー企業側が7、ベンダー企業側が3の割合だと紹介されています。この割合は、ここ数年改善されず、むしろ悪化しているとのことです
  2. 自社システムをコストと見て、丸投げしがちです。同じ記事で、日本企業はシステムに関する業務を、社内の情報システム部門やベンダー企業に丸投げしがちで、経営戦略とシステム戦略が分かれてしまうケースがあると述べられています
  3. 情報を共有している企業ほど、内製化が進む傾向があります。同じ記事が紹介する、経済産業省・デジタル庁・IPAが参画した委員会の総括レポートによると、経営層と情報システム部門・業務部門の間で適切に情報を共有している企業は、ブラックボックス対策や内製化の取り組みを進められている傾向がありました
  4. 内製化の壁は、人材です。IPAの「DX動向2025」(2025年6月26日公開、日本1,535社の回答)では、DXを推進する人材が不足している日本企業は8割を超えました。比較した海外の2か国では、「やや過剰である」と「過不足はない」の合計が、それぞれ7割と5割程度です

同じ連載の後編では、ベンダー企業の側にも変化が求められています。ユーザー企業からの発注を待つ「御用聞き」のやり方から、内製化を支える伴走役へ、立ち位置を変えるという内容です。国の資料が描いているのは、外注が減る世界よりも、頼む側と頼まれる側の役割が変わる世界です。

ここで挙げた数字は、ITエンジニアの所属の偏りや、DX人材の充足の話です。それでも、構造は他の仕事にも当てはまると私たちは考えます。頼む側が基準を持たないと、頼まれる側は言われたとおりにしか動けません。その結果、改善の機会が、頼む側に戻ってきません。

結果2:AIで、作業の外注先が社内に戻ってきた

ここ1〜2年で、内製化の意味が変わりました。調べる、まとめる、下書きを作る、転記する、議事録を起こす。これまで外部の会社や社内の担当者に頼んでいた作業を、AIが担えるようになったからです。私たちはこれを、作業の外注先が社内に戻ってきた、と見ています。総務省の令和8年版情報通信白書(2026年)の、企業向けアンケートの結果で確認します。

86.4%何らかの業務で生成AIを利用している日本企業の割合(「わからない」を除く回答企業のうち)
68.9%生成AIの活用方針を定めている日本企業の割合(前年度調査は49.7%)
27.0%生成AIによる業務変革に「組織的な取組はない」と答えた割合(「利用を禁止している」企業を除く回答企業のうち)

86.4%と27.0%は、設問ごとに母数(除いた回答)が違うため、同じ企業全体の割合として並べて比べることはできません。

使う会社は増えました。活用方針を定めた企業は、大企業で74.0%、中小企業で58.1%です。ただ、組織の仕事としては、まだ進んでいません。「利用を禁止している」企業を除く回答企業のうち、「組織的な取組はない」とした企業が約3割あり、比較対象の米国など他の3か国に比べて顕著に高い結果でした。企業規模別では、中小企業で特に高い傾向です。また、環境整備の設問では、比較対象の他の3か国で、生成AIに社内データを学習させたり、参照できるデータベースを構築したりしていると答えた割合が5割を超え、日本より大幅に高くなっています。

結果3:使い方は効率化に寄り、差は「何を任せるか」に移る

IPAの「DX動向2026」(2026年7月16日公表、国内企業1,799社)は、AI導入は大企業を中心に広がっている一方、利用用途や効果は業務の効率化・迅速化が中心で、企業価値の創出への展開は限定的だとまとめています。総務省の白書も、日本は他の3か国に比べて、AIを効率化ツールととらえる傾向が見られると述べています。

作業が安く、速く、社内で手に入るようになると、差がつく場所が移ります。作業は誰でも手に入ります。残る差は、何を任せるかを決める力と、出てきたものの良し悪しを判断して直す力です。白書が紹介するAI活用の先進企業も、業務プロセスの再設計で、人間とAIの役割分担の設計を重視していました。

白書には、内製の事例もあります。イオングループは、複数のAIエージェントが連携するシステムを内製で開発中です。ダイキン工業は、空調機の専門知識に関する生成AIの精度向上をめざして、独自のLLMの開発に着手しています。白書はこれらを、自社で独自のノウハウやデータを持ち、競争力の源泉となる領域で、さらに価値を生み出す取り組みとして位置づけています。内製するのは、競争力の源泉に近い領域です。この考え方は、次の章の判断基準にそのまま使えます。

03そこから言えること。メリット・デメリットと判断の基準

内製化のメリット:言える範囲と、言えない範囲

先に断っておきます。「内製化すればコストが下がる」と言い切れる公開データは、確認できていません。ここでは、起きることを5つ並べます。実際に運用して確かめられたものには、そう書きます。

  1. 速くなる。外注は、依頼、見積もり、納品、修正と、往復が起きます。社内なら、気づいたその日に直せます。公開している商談準備の型では、予定が入った時点で調査まで進み、人が確認するのは準備ができたあとです
  2. 改善が回る。外注は、納品で一区切りになりがちです。社内なら、結果を見て、次の回に反映できます。手順が、回すたびに少しずつ良くなります
  3. やり方が会社に残る。手順と基準が社内にあれば、担当が替わっても、取引先が変わっても続きます。外部に頼り切ると、中身が見えないブラックボックスが生まれます。IT・システム分野の国の資料も、ブラックボックス対策と内製化を並べて扱っています
  4. 社外に出せない情報を扱える。個人情報、価格、未公開の方針などを、外部に渡さずに処理できます。AIに入れる場合も、扱う範囲は先に決めます
  5. 回数が多い仕事ほど、割安になりうる。立ち上げには費用がかかります。ただ、頻度の高い仕事は、回すほど1回あたりの負担が下がります。公開している商談準備の型では、1商談あたりの人の作業は、導入前に実測した4.5時間から、導入後は15分にする設計です(導入後の実測は計測中。4章)

内製化のデメリットと手当て

内製化には、はっきりした代償もあります。起きることと、手当ての方法を表にします。

デメリット起きること手当て
立ち上げに人と時間がかかる最初のうちは、外注より遅く、手間が増える。人材不足の影響も受ける(2章)最初は1本の流れに絞る
担当者への依存(属人化)内製化した結果、1人しか分からない仕事が増える手順と基準を文書で残す。判断を見られる人を2人にする
品質のばらつき専門性が足りず、外部の専門家より質が落ちる専門性が高い工程は、外に残す
固定費になる人を抱え、使わない月も費用が出る回数が多い仕事だけを社内に持つ
内向きになる社外の視点や、最新のやり方が入りにくい。IPAの「DX動向2025」は、副題に「『内向き・部分最適』から『外向き・全体最適』へ」を掲げている外部の専門家を、壁打ちの相手として入れる
確認と承認が社内に積まれるAIで作業が減っても、判断する人に確認が集まる人が見る回数を先に決める(商談準備の型では2回)

内製化しないほうがいい4つの場合

次の4つのどれかに当てはまる仕事は、外に頼んで構いません。

WHEN NOT TO内製化しないほうがいい4つの場合と、よく出る声の例(想定の台詞)
場合 1年に数回しかない、専門性の高い仕事「覚えた頃には、次の改正」
場合 2自社の強みと関係のない仕事「うちが磨いても差がつかない」
場合 3判断できる人がいない。育てる予定もない「出てきたものの良し悪しが分からない」先に手当てする
場合 4量が少なく、立ち上げの費用が回収できない「月に1回のために、仕組みを作るのか」
図4 4つの場合のうち、場合3だけは、外に頼むだけでは解決しない。頼む前に、判断できる人を1人決める必要がある。「 」の声は、よく出る声の例として想定した台詞で、実際の発言ではない。

場合3は特に注意が必要です。判断できる人がいないまま外に頼むと、出てきたものを誰も評価できません。この場合は、判断を一時的に借りる形(顧問やアドバイザリー)から始め、社内で判断できる人を1人育てます。

4つに当てはまる仕事でも、頼み方は変わります。基準を示し、出てきたものを確認する役を、社内に置いてください。1章で書いた「判断を持つ」は、外に頼む仕事でも変わりません。

何を内製し、何を外に頼み、何をAIに渡すか

仕事を1つ選んで、3つの問いを聞きます。聞く順番は、判断の重さ、社外に出せない情報、頻度の順です。

3 QUESTIONS仕事ごとに聞く3つの問いと、聞く順番
問い 1判断は重いか

判断、責任、相手との関係が要るか。お金、人の評価、相手との約束、社外への発信が絡むなら「重い」。間違えたときに戻せるかも見る

重ければ、先に社内に確保
問い 2社外に出せない情報はあるか

個人情報、価格や契約の条件、未公開の方針を扱うか。扱うなら、外に出す前に、扱い方を決める

あれば、扱い方を先に決める
問い 3頻度は高いか

月に何回起きるか。毎日、毎週、案件ごとに起きる仕事は「高い」、年に数回なら「低い」。回数が多いほど、立ち上げの費用を回収しやすい

AIか外注かを分ける
図5 判断が重いものを先に社内に確保し、次に情報の扱いを確かめ、最後に頻度でAIか外注かを分ける。

3つの答えの組み合わせで、渡し先は次の表のように決まります。

DECISION TABLE内製/AIに渡す/外注の判断の表
頻度 高・判断 軽・情報 なし

渡し先AIに渡す

社内に残すもの指示文と、出来上がりの確認

例公開情報の調査、議事録、資料の下書き

頻度 高・判断 軽・情報 あり

渡し先AIに渡す(扱う環境と範囲を先に決める)

社内に残すもの環境の管理と、AIに入れてよい情報の線引き

例顧客記録の転記、社内データの集計

頻度 高・判断 重・情報 どちらでも

渡し先人が持つ(内製の核)。材料集めはAI

社内に残すもの判断そのもの

例提案を送るかの可否、価格の決定、評価

頻度 低・判断 軽・情報 なし

渡し先外注

社内に残すもの依頼の基準と、受け取ったときの確認

例年に1回の撮影、単発の制作物、スポットのデータ入力

頻度 低・判断 重・情報 なし

渡し先外注で専門知識を借りる

社内に残すもの最終の決定

例税務や法務の相談、新しい取り組みの初回の設計

頻度 低・判断 軽/重・情報 あり

渡し先社内の人が行う。外に出すなら、守秘の取り決めをして範囲を絞る

社内に残すものすべて

例資金調達の資料づくり、人事の個別の案件

図6 渡し先の判断の表(Zeyra の整理)。「情報」は社外に出せない情報の有無。頻度の高低、判断の軽重は、3つの問いの答え。実際に動かして、時間や判断の重さが違っていたら、書き直す。

迷ったときは、次の1つを自分に聞きます。「この仕事の判断を、1年後も、社内の誰かが説明できるか」。説明できないなら、作業を外に出していても、判断は社内に取り戻します。

この表では、「AIに渡す」も内製化の一形態として扱っています。作業をAIが担っても、指示文と判断は社内にあるからです。外に頼むより、AIに渡すほうが、内製に近いと考えると整理しやすくなります。工程ごとの記入表の作り方は、業務棚卸の記事に書きました。

04実践の記録。商談準備の型

商談準備の型:作業はAIへ、判断と改善は人が持つ

実践の記録(導入前は実測、導入後は設計値)

実際に運用している型として、商談が1件入るたびに発生する、調査・資料づくり・CRM登録の流れを自動化した記録を、メソッドのページに公開しています。

4.5時間→15分(設計値)1商談あたりの人の作業(商談そのものを除く)。導入前の4.5時間は実測、導入後の15分は設計値
7工程工程の形は変えず、担当だけを移した
2回人が判断する回数(導入後は2回にする設計。導入前は6回)

導入後の15分は、商談前の確認10分と、送信の可否5分を合計した設計値で、導入後の実測は計測中です。導入前の4.5時間は実測です(2026年10月時点)。

この記録を、内製化の言葉で読み直します。

  • 作業は、AIと仕組みに渡しました。調査、資料の組み立て、CRMへの登録、議事録、お礼メールの下書きです
  • 判断は、人が持つ設計です。商談前の確認と、送るかどうかの2回だけです
  • 改善も、人が持つ設計です。たとえば、何を新規商談とみなすかの決め方は、人が決めて直します

最初に自動化したのは、調査ではなく検知でした。商談の検知を人の目に頼ると、後ろの工程を自動化しても、気づくのが遅れた商談は準備なしで臨むことになります。きっかけを、人からカレンダーという仕組みに移したところから、この業務は動き始めます。

社内に持たずに、外から迎えるもの

内製化では、社内で持つもの、AIに渡すもの、外から迎えるものの3つを分けておくと決めやすくなります。外から迎えるのは、現場の深い知見です。AIが得意なのは、ネット上にある情報をもとに、いまの仕事を速く、省力化することです。現場の暗黙知や、生の情報は、AIでは埋まりにくい部分です。そこは、その領域の経験が深く、実績のある人を、コアメンバーやパートナーとして迎えて、チームを組むのが向いています。

社内の土台は、順番を決めて作ります。まず情報の置き場と命名のルールを決め、会社の方向性を言葉にし、CRMをAI前提で組みます。次に、会社に必要な機能を洗い出し、繰り返す業務を型にします。業務を手伝ってもらう人には、手順ごと渡して、一緒に仕事をしながら教えます。

05進め方と注意点。手順・段階・失敗パターン

内製化を進める5つの手順

内製化は、一度にやろうとすると止まります。1本の流れから始めます。

5 STEPS内製化を進める5つの手順
手順 11本の流れを選ぶ

毎月必ず起き、いま外に頼んでいる流れを1つ。商談1件の最初から最後まで、のような単位。会社全体には広げない

範囲を絞る
手順 2作業・判断・改善に分ける

工程ごとに、誰がやり、誰が決め、誰が直しているかを書く。判断も外にある行が、最初の手当て先

現状を書く
手順 3基準で振り分ける

3章の表に、工程を当てはめる。判断が重い工程は、先に社内に置く

社内/AI/外注
手順 4人が見る場所を決めて動かす

AIが出したものを、人が確認して進めるか直すかを決める場所を、2つ以内に。最初に決めると迷わない

判断を持つ
手順 5手順と基準を文書にする

結果を見て直す人を、1人決める。改善の担当が決まらないと、内製化は完了しにくい

改善を持つ
図7 最初に判断を社内に置き、作業を移し、最後に改善の担当を決める。

最初の一歩は、30分ほどでできます。外に頼んでいる仕事を5つ書き出し(頼み先、月の回数、かかっている費用を、分かる範囲で)、3章の3つの問いを当てて、渡し先を仮に決めます。そのうえで、判断が重く、いまは外にある行を1つ選び、社内の誰が持つかを書いてください。

いま、どの段階にいるか

現在地を確かめる目安も置いておきます。

4 STAGES内製化の4つの段階と、よく出る声の例(想定の台詞)
0 任せきり

状態作業も判断も外にある。見積もりと納品だけが社内に来る

声の例(想定)「中身は分からないが、回っている」

1 判断を取り戻す

状態依頼の基準を社内で書き、納品物を確認している

声の例(想定)「頼む前に、何を良しとするか書いてある」

2 作業を移す

状態回数が多く、判断が軽い作業を、社内かAIに移している

声の例(想定)「定例の調査は、もう外に出していない」

3 社内で改善する

状態結果を見て、社内で手順を直している。外には専門性の高いものだけ頼む

声の例(想定)「直すのは社内。外には専門の相談だけ」

図8 順番は、判断、作業、改善。段階1を飛ばして段階2に進むと、判断の基準がないまま作業だけが社内に戻り、品質が安定しにくい。声は、よく出る声の例として想定した台詞で、実際の発言ではない。

失敗パターン5つ

  • 外注費を下げることだけを目的にする。判断と改善を取り戻す前に外注を切ると、品質が落ちて、結局また外に頼むことになります
  • 作業だけ社内に戻し、判断と基準を書かない。担当が替わった瞬間に、回らなくなります。手順と基準は、文書にします
  • 全部を一度に内製化しようとする。表が大きくなるほど、更新されなくなります。1本の流れで始めます
  • AIに渡したことで、内製化できたと考える。指示文と確認を持つ人がいなければ、出てきたものの良し悪しを、誰も判断できません
  • 社外に出せない情報の扱いを決めずに、AIや外部に載せる。個人情報や契約の条件を扱う工程は、扱い方を先に決めます。決まるまでは、人が行います

内製化支援を頼むとき、頼む側が確認すること

内製化支援とは、立ち上げと教育を、期間を決めて外部が担い、最終的に社内で回せる状態にして渡す支援です。ふつうの外注と違い、支援する側が最後にいなくなることを前提にしています。頼む前に、次の点を確認してください。

  • 完了の条件が「納品」ではなく、「社内の担当が自分で直せる状態」になっているか
  • 渡されるものが、成果物だけでなく、手順、判断の基準、AIへの指示文まで含んでいるか
  • 自社の環境(使っているツール、フォルダ、データ)の上で動くか。支援側の専用の環境でしか動かないものは、内製化と呼びにくくなります
  • 人が確認する場所が、最初に決まっているか
  • 専門性が高い領域を、社内に置くか外に残すか、正直に分けて提案してくれるか
  • 契約が終わったあとに、引き継ぎの資料が残るか

06よくある質問とまとめ

よくある質問

Q. 内製化とは、簡単に言うと何ですか?

これまで外部に頼んでいた仕事を、自社で行えるようにすることです。外注を全部やめることではありません。判断と改善を社内に持つことが中心で、作業は社内の人、外部の会社、AIのどれがやっても構いません。

Q. 内製化とアウトソーシングは、どちらがよいですか?

どちらか一方が正しいわけではありません。判断を社内に持ったうえで、仕事ごとに使い分けます。回数が多く、自社の強みに近い仕事は内製化、年に数回の専門性の高い仕事や、自社の強みから遠い仕事は外に頼むのが基本です。3章の判断基準で、仕事ごとに決められます。

Q. 内製化のメリットとデメリットは何ですか?

メリットは、速さ、改善の回しやすさ、やり方が会社に残ることです。デメリットは、立ち上げの手間、属人化、品質のばらつき、固定費です。3章に、手当ての方法とあわせて書きました。

Q. 内製化と外注では、どちらがコストが安いですか?

公開されているデータでは、言い切れません。私たちが確認できた範囲でも、一般的な比較はありませんでした。仕事ごとに、頻度と立ち上げの費用で見ます。回数が多い仕事は、内製化のほうが割安になりやすく、年に数回の仕事は、外に頼むほうが安くなりやすいです。

Q. 従業員が少ない会社でも、内製化できますか?

できます。ただし、全部はできません。総務省の令和8年版情報通信白書では、生成AIの活用方針を定めている中小企業は58.1%で、大企業の74.0%より低い結果でした。人も限られるため、1本の流れから始め、判断を持つ人を1人決めるところから進めます。

Q. 内製化したくても、人材がいない場合はどうすればよいですか?

IPAの調査でも、DXを推進する人材が不足している日本企業は8割を超えています。まず、判断できる人を1人決めてください。その人が判断を持ち、作業はAIに渡すか、外に頼みます。判断を一時的に借りる形(顧問やアドバイザリー)から始めて、社内の人に引き継ぐ方法もあります。

Q. 内製化支援と、ふつうのコンサルティングは何が違いますか?

完了の条件が違います。内製化支援は、社内の担当が自分で直せる状態になることを完了とします。提案書や成果物が納品されても、社内で回せなければ、完了ではありません。5章のチェックリストで、頼む前に確認できます。

Q. 個人情報や社外秘の情報を、AIに入れてもよいですか?

一律には言えません。社内の規程、契約、使うサービスの条件に沿って、先に決めてください。決まるまでは、その工程は人が行うのが安全です。3章の問い2のとおり、個人情報や契約の条件を扱う工程は、AIに載せる範囲と扱い方を先に決めます。

まとめ

  1. まず、外に頼んでいる仕事に、判断の基準が社内にあるかを見る。書かれていなければ、作業を戻す前に、基準を書くところから始める。
  2. 次に、仕事ごとに渡し先を決める。判断の重さ、社外に出せない情報、頻度の順に確かめ、内製化しないほうがいい仕事は、正直に外へ残す。
  3. 最後に、手順と基準を文書にして、改善の担当を1人決める。1本の流れで動かし、結果を見て直す人が社内にいれば、内製化は進んでいる。

AIによって、作業の外注先が社内に戻ってきた今は、「何を任せ、何を人が決めるか」を決める仕事が、組織に残ります。内製化は、その決め事を、社内に取り戻す取り組みです。

この記事を書いた人

太田 壮哉
太田 壮哉Zeyra株式会社 代表

採用・組織人事のコンサルで200社以上、AI系ブティックファームで事業責任者。いまは AI 前提の組織設計を、自社で回しながらクライアントに提供している。

本記事の数値・制度は2026年10月時点のものです。各社の取り組みは公開情報をもとに Zeyra が整理しました。引用・転載は出典(https://zeyra.co.jp/column/naiseika/)を明記のうえ、ご自由にどうぞ。

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出典・参考

  • デジタル庁ニュース「企業のDXを阻む「レガシーシステム」とは?ユーザー企業がモダン化を進めるために取るべき対策とは【レガシーシステムモダン化委員会総括レポート:前編】」(公開 2025年8月27日)digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2025-08-27-1
  • デジタル庁ニュース「“御用聞き”から提案型ビジネスへ。レガシーシステムのモダン化に向けてベンダー企業が取るべき対策とは【総括レポート:後編】」(公開 2025年8月27日)digital-agency-news.digital.go.jp/articles/2025-08-27-2
  • IPA プレス発表(2025年6月26日)『DX動向2025』の公開 ipa.go.jp/pressrelease/2025/press20250626
  • IPA プレス発表「国内企業のDX動向・AI活用動向のポイントを公表」(公開 2026年7月16日。回収1,799社、実施 2026年4月17日〜6月12日)ipa.go.jp/pressrelease/2026/press20260716
  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」第Ⅰ部第2章第1節 企業におけるAI利用の現状(生成AIの活用方針等/組織的な取組状況/生成AIの業務利用状況)soumu.go.jp/…/r08/html/nd121110/nd121120/nd121130
  • 総務省「令和8年版 情報通信白書」「AI導入・活用を効果的に進めていくために重要となる要素」(人間とAIの役割分担、イオングループ・ダイキン工業の事例)soumu.go.jp/…/r08/html/nd121410
  • Zeyra株式会社「商談準備をAIに任せる。検知から資料・CRM登録まで、人は確認10分」(公開 2026年10月12日)。工程は、運用している型をそのまま掲載。導入前の4.5時間は実測、導入後の15分と人の判断2回は設計値(導入後の実測は計測中) /method/meeting-prep
  • 内製・外注・アウトソーシング・BPO・内製化支援の使い分け、3章の3つの判断基準と判断の表は、Zeyra の整理(2026年10月時点)
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